シナジーが財務リターンを2倍に引き上げる
小宮:CVCにおいて、財務リターン(投資益)と戦略リターン(本業への貢献)のバランスをどう取っていますか。
波多野:私たちは「財務リターンはマスト」だと考えています。外部のLP投資家から資金を預かっている以上、投資としての成功は絶対条件です。その上で重要なのは、戦略的なシナジーがいかに財務リターンに寄与するかという視点です。私が過去のデータを徹底的に分析したところ、「ソニーの事業部とコラボレーションしている案件」は、そうでない案件に比べて財務リターンが2倍以上高いことが分かりました。つまり、戦略的意義がある投資こそが、結果としてファイナンシャルな成功も引き寄せるのです。
しかし、現在のファンド運営下では別会社のエージェント同士で、協力は前提ではなく命令もできません。この状態でどう自律的にコミュニケーションして任務を果たすか。これが非常に難しい。
小宮:具体的にどのような領域を投資のターゲットに据えているのでしょうか。
波多野:市場規模や成長性に加え、ソニーの事業によるバリューアップが期待できる以下の6領域に厳選しています。
- DeepTech:高度な科学技術
- EntertainmentTech:ゲーム、音楽、映画、スポーツなど
- EnterpriseTech:法人のDX支援
- Fintech/DLT:分散型台帳技術を含む金融イノベーション
- ClimateTech:気候変動対策
- LBE:Location Based Entertainment(施設型エンタメ)
ソニー流・投資の流儀、4つの特徴
小宮:他のCVCにはない、ソニーならではの強みはどこにありますか。
波多野:大きく4つの特徴があります。1つ目は、マネジメントの強いコミットメントです。投資委員会にはCSOの御供や元CTOの北野(現・ソニーグループ チーフテクノロジーフェロー 北野宏明氏)らが名を連ねています。2つ目は前述のグローバルフットプリント(世界規模の拠点展開)。3つ目は事業部門との強力な連携。そして4つ目が徹底したバリューアップ支援です。
小宮:事業部との連携は多くの企業が苦労する部分ですが、なぜソニーではうまく回るのでしょうか。
波多野:ポイントは投資判断の「自律性」です。私たちは投資にあたって、事業部からの事前承認を必須としていません。事業部に寄り添いすぎると、「今すぐ役立つもの」に目が向き、将来の大きな破壊的イノベーションを見逃してしまうからです。私たちはファンドとしての仮説に基づき、将来的なインパクトを見据えて投資を実行します。事業部が関心のある領域ならば直接事業部が行えばよいという明確な役割分担の意識が功を奏しています。また、メンバーの約半数が事業部出身であり、現場の「共通言語」を持って対話できることも大きな利点です。
