ビジネスでの「デザイン」の重要性、日本で語られる「デザイン思考」の文脈
「デザイン」の概念が昨今、ビジネスの世界まで広まっている。デザイン思考という言葉を知っている方も少なくはないだろう。デザイン思考とは、デザイナーが暗黙的にやってきた思考を体系化したもので、デザイナーでない人でもその思考が使うことで、これまでになかったようなアイディアを生み出すものである。デザイン思考は目に見えるプロダクトデザインから、見えない企業戦略のデザインなど多岐に渡り使われている。今後その有効性に対する期待は高まることが予測される。
まずは、私とデザイン思考の関係からお話ししたい。私が最初にデザイン思考に触れたのは、広告会社に勤めていたときだ。担当したクライアントの海外でも展開するブランドでコミュニケーション開発に携わった。そこでは、グローバルで通用する広告キャンペーンを作るため、人間の本質をついていて国境や文化を越えて共感できるものが求められた。クライアントと共に、私たちはターゲットやターゲットを取り巻く環境を注意深く観察し、人間中心のデザイン思考を使いながら広告をつくっていた。
その後私は、2012年から3年間、デンマークのビジネスデザインスクールであるKAOSPILOTに留学し、教育現場におけるデザイン思考や個人に合った創造性やリーダーシップの育み方を知った。夏休みにはデザインコンサルティングファームのIDEO東京オフィスでインターンシップを経験させてもらい、企業や大学向けにデザイン思考のワークショップ等を行った。卒業プロジェクトは日本に半年間、一時帰国し、クリエイティブ・コンフィデンスの向上をテーマに起業家やデザイナー、大学教授など、様々な人たちにデザイン思考に関するヒアリングを行い、自分自身でもワークショップやセミナーを行った。
このような活動を通して気づいたことがある。それは、日本で紹介されているデザイン思考と私が実際に生活しながら学んだデンマークのデザイン思考は異なる特徴があるということだ。特にその教え方と学び方が異なる。
日本でデザイン思考を学ぶとき、デザイン理論やその背景思想、発展の歴史などについて理解した上で、実践的に練習するケースが多い。特に日本で広く紹介されているアメリカ発のデザイン思考は、ロジカルで体系的にわかりやすく説明されているため、誰もが比較的容易にデザイン思考の概念を理解することができる。