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戦略投資とファイナンス

仮説指向計画法(DDP)が必要な理由

第4回

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クリステンセン教授も注目する
「Discovery-Driven Planning(仮説指向計画法)」

 売上や利益の見込みは、さまざまな要因が複合した計算結果です。ここで意思決定者が知りたいのは、計算結果ではなく、その見込みを達成するために必要な条件です。

 意思決定者の視点からは、Discovery-Driven Planningは、

  • 説明・理解が難しいことに対しては、利益を仮説に分解して説明を求めます
  • 何をするのか行動計画が曖昧な場合には、時間軸に分解して説明を求めます

 連載第1回で、意思決定者にとっては、「よくわからない」という状況が問題なのだという話をしましたが、そのわかりにくさに対する一つの解決策が、Discovery-Driven Planningの活用です。

意思決定者の視点から見ても、説明がわかりやすい手法

『イノベーション・オブ・ライフ』 『イノベーション・オブ・ライフ』 Discovery-Driven Planningには、イノベーションのジレンマで有名なクリステンセン教授も強い関心を示しています。たとえば、2008年のハーバード・ビジネス・レビュー誌に寄稿した論文「財務分析がイノベーションを殺す(Innovation Killers)」(ドキッとする題名ですね)では、「Discovery-Driven Planningは、成功の確率を大きく改善する可能性がある」と述べています。
 また、クリステンセン教授は、近著『イノベーション・オブ・ライフ』で、ヘンリー・ミンツバーグ教授が提唱する「意図的戦略(deliberate strategy)」と「創発的戦略(emergent strategy)」の考え方を用いて、Discovery-Driven Planningを解説しています。

 ミンツバーグ教授によれば、よく考え抜いた計画を実行しているとき、「意図的戦略」を推進しているといいます。一方で、予期しない問題や機会が生じる(emerge)ことも、もちろんあります。このような予期しない機会を追求する戦略を「創発的戦略」といいます。

 「意図的戦略」から「創発的戦略」への転換は、整然と進むものではなく、長い時間をかけて何が起きているのかを関係者が理解し、多様でむしろ無秩序なプロセスから、当初の「意図的戦略」に固執するか、「創発的戦略」を選択するか、ときには関係者の争いもありながら進められる非常に困難なプロセスである、とクリステンセン教授は論じています。

 それでは、「意図的戦略」と「創発的戦略」のどちらを選択すべきかは、どうすれば判断できるようになるのでしょうか。

 ここで、クリステンセン教授は、Discovery-Driven Planningを紹介しています。

 その要点は、「どのような仮説が正しければ、成功するのか」を計画時に洗い出すことです。計画を実行していくうちに、当初の仮説が誤っていることがわかった場合には、「意図的戦略」を修正するか「創発的戦略」を選択する必要が生じます。当初の仮説が正しいと証明できれば「意図的戦略」をそのまま推進することによって成功に近づく、という考え方です。

 2013年5月15日と16日に、クリステンセン教授が創業者の一人であるコンサルティング会社イノサイトのCOOケビン・ボーレン氏が来日し、多くの聴衆を前に講演を行いました。その中でも、Discovery-Driven Planningは、知識が不足し、仮説を試すことが必要な分野で実務的に役立つ手法として取り上げられていました。

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「世界の経営学者はいま何を考えているのか」で紹介

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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