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戦略投資とファイナンス

仮説指向計画法(DDP)が必要な理由

第4回

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Discovery-Driven Planningのもう一つの柱:
マイルストン計画法

 逆損益計算で洗い出した仮説は、外れていく可能性があります。そこで、いつ、どの仮説を、どうやって検証するのか、あらかじめ計画しておくのが「マイルストン計画法」です。

 実行開始後、“とにかく頑張ろう”となるのは大切なのですが、“とにかく頑張っている”だけだと、仮説を検証し学習するタイミングを逃してしまいます。マグラス教授は、2011年にハーバード・ビジネス・レビューに発表した「『知的失敗』の戦略(Failing by Design)」においても、むしろ、失敗は当然起きるものとして、失敗から組織的に学ぶことが重要である、と強く主張しています。

仮説は外れるものであり、どの仮説をいつ、どうやって検証するのか、あらかじめ計画しておく図表4.仮説は外れるものであり、どの仮説をいつ、どうやって検証するのか、あらかじめ計画しておく

ビジネスプランを時間軸で分解する」

 逆損益計算法が利益構造の分解であるのに対して、マイルストン計画法は「時間軸の分解」です。経験的には、新規事業等で利益構造の分解はできていても、時間軸の分解が明確でないことが多いように思います。

 このマイルストン(チェックポイント)の洗い出しについても、逆損益計算法と同様に、構想された未来のsteady stateからスタートします。そして、そのsteady state達成までに、自ら実行しなければならない行動と、自らコントロールしないが起きうるイベント(競合の反応、顧客からのキャンセル等)を書き出します。書きだした行動・イベントで、どの仮説が検証できるのか、図5のように一覧表に整理します。

実行後のフォローアップのポイントを明確にし、必ず仮説を確認する図表5.実行後のフォローアップのポイントを明確にし、必ず仮説を確認する

 もし一覧表の中に、どのタイミングでも検証されない仮説があれば、その仮説を検証する行動が欠落していることになります。マイルストン計画法では、仮説から学習するタイミングを逃してはならない、とされていますので、どのタイミングで、どんな方法でその仮説を検証するのか考え、計画に織り込まなければなりません。

 その際、マクミラン教授は、「早く、安く失敗する方法を考えよ(fail fast, fail cheap)」と言っています。失敗のコストが大きくなり過ぎる前に、早く、安く重要な仮説を検証する方法を考えよ、という意味です。検証方法をしっかりと考えるためには、検証すべき仮説そのものが明確に定義されていることが重要です。

 マイルストン計画は時間軸に沿った具体的な行動計画ですが、初期的段階では、5~10のマイルストンが定義されていれば十分である、とされています。また、その後も多くても20以内に収めると良いとされています。重要な仮説が外れると、その後のマイルストンも修正される可能性がありますので、初期のマイルストン設定が、より重要となります。

リアル・オプション的発想が織り込まれている

 それぞれのマイルストンで仮説が検証されて、その仮説が大きく外れていたとします。良い方向に外れていても、悪い方向に外れていても、当初想定していたことと異なるわけですから、その場合は柔軟に計画を修正しなさいというルールが、マイルストン計画の核心です。

 「実行計画を修正しゴール(達成目標)は修正しない」ということもあり得れば、「ゴールの上方修正」もあり得るし、「外れ度合いによっては躊躇せずに中止も検討すべき」とされています。この考え方は、計画を実行しながら学習した知識に基づく新たな選択を促しています。

 つまり、各マイルストンにおいて、最も望ましい選択を行うように手法が設計されているわけです。「計画を決め打ちせずに、将来の適切なタイミングで有利な選択をする」ということは、リアル・オプション的な発想と言えるでしょう。

 以上が、Discovery-Driven Planningの要点です。この手法の良いところは、極めてシンプルなので実務に活かしやすく、組織内のルールとして共有しやすいことです。その一方で、突き詰めて考えていくための方向性もしっかりと示されています。

 次頁以降では、Discovery-Driven Planningが注目される理由を、クリステンセン教授による言及や、日本でも話題になっている書籍などから、ひも解きます。

次のページ
クリステンセン教授も注目する<br /> 「Discovery-Driven Planning(仮説指向計画法)」

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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