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仮説指向計画法(DDP)が必要な理由

第4回

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「世界の経営学者はいま何を考えているのか」で紹介

 昨年末に出版された『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)では、世界の経営学の最前線について、米国ニューヨーク州立大学バッファロー校の入山章栄准教授によって、幅広くわかりやすく解説されています。その第12章「不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか」で、Discovery-Driven Planningが紹介され、以下のようにまとめられています。

不確実性の高い事業環境では、事業計画とは単に計画を練るためのものではなく、事前に不確実性を洗い出し、仮定は仮定としてつねに認識し、それを恒常的にチェックするために行うものである、ということなのです

 入山先生の記述は、実に的を射た解説だと思います。変化が激しいこの時代に、計画が計画通りに進むと信じることは、もはや現実的ではないのでしょう。

 リタ・マグラス教授の最新刊『The End of Competitive Advantage』(Harvard Business Review Press)では、伝統的な戦略理論が達成目標とする競争優位はもはや持続的なものではない、つまり伝統的な戦略理論は既に時代遅れであると説きます。そして、従来はアントレプレナーシップやイノベーション創出の手法であった、仮説設定と学習によって柔軟に変化していくことが、今後の戦略の柱となるだろうと述べています。

 「決め打ち」でもなく、「出たとこ勝負」でもない、仮説設定と学習の繰り返しが事業の成長をもたらす、という考え方(principle)が、Discovery-Driven Planningの要点なのです。

 いかがでしたでしょうか。Discovery-Driven Planningは、シンプルで奥の深い計画法です。高度で複雑過ぎて、事業の現場では使いにくい経営理論が多い中で、「逆損益計算法」と「マイルストン計画法」の二つの柱に整理された、使いやすい理論ではないでしょうか。

 さて、Discovery-Driven Planningは、企画の立案に威力を発揮しますが、不確実な事業を対象にしているがゆえに、必然的に経営陣には意思決定の問題が生じます。経験と勘と度胸で、清水の舞台から飛び降りる!というのではなく、意思決定にもシンプルで効果的な手法を活用したいものです。そこで、次回は、組織の意思決定の質を高める戦略意思決定手法(Strategic Decision Management)」をご紹介します。次回もどうぞお楽しみに!

 Rita Gunther McGrath and Ian C. MacMillanによる主な著作 

  1. “Discovery-Driven Planning” Harvard Business Review, July-August 1995
  2. 日本語版「未知の分野を制覇する仮説のマネジメント―ユーロ・ディズニーの失敗、花王の成功に学ぶ―」ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー1995年10月
  3. “Discovery-Driven Growth” Harvard Business Press, 2009
  4. 「アントレプレナーの戦略思考技術―不確実性をビジネスチャンスに変える」ダイヤモンド社2002年1月

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

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