「デジタル革命」は大きなチャンス
ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー氏は、「私たちは技術革新力をばねに、厳しいビジネス環境と市場の低迷を乗り切り、2015年も成長傾向を維持することができました。業績改善の最大の原動力となったのは、ネットワーク化ソリューションを相次いで打ち出せたことです」と述べている。
ボッシュでは現在、とりわけIoTによるネットワーク化をベースに、事業変革が進んでいる。その一部は根本的なレベルで進んでおり、ボッシュはIoTの3つのレベルのすべてでアクティブに事業活動をしている、世界で唯一の会社だとしている。
ボッシュ・グループは、ネットワーク化を実現するための基礎技術、たとえばセンサーやソフトウェアを提供するだけでなく、それをベースにした新しいサービスの開発を進めている。
デナー氏は、「センサー、ソフトウェア、そしてサービスに関する専門知識を駆使し、私たちはネットワーク化された世界を形づくり、新しいビジネスチャンスを切り拓こうとしています。そんな私たちにとって、『デジタル革命』は脅威ではなく、それどころか大きなチャンスだと考えています」と述べている。
たとえばボッシュ・グループは、スマートホーム市場への参入を明らかにし、数週間前にラスベガスで開かれたCES国際家電ショーで、社内で開発したスマートホームシステムを初めて公開している。
2015年の4つのビジネスセクター別業績動向
モビリティソリューションズセクターは、暫定値ながら売上を大幅に伸ばすことができたという。2015年の同セクターの売上高は、計417億ユーロ(約5.6兆円)と、前年比12%の増加を記録した。なかでも好調だったのが、ガソリン/ディーゼル燃料の噴射システム、ドライバーアシスタンスシステム、インフォテインメントシステムだという。
消費財セクターも非常に堅調な成長を遂げ、売上高は前年比9.3%増の172億ユーロ(約2.3兆円)となった。このセクターでひときわ売れ行きが好調だったのは、コードレスタイプの電動工具と、ネットワーク機能に対応したコンロなどの家電製品だった。
エネルギー・建築関連テクノロジーセクターの成長率は11%で、売上高は51億ユーロ(約6,800億円)となり、前年に比べて大幅に増加した。この成長の要因として、サービス、大型インフラ事業向けのセキュリティーシステムのほか、ネットワーク化されたスマート空調ソリューションが挙げられる。
産業機器セクターでは、世界的な機械産業の活動低迷の影響が続いており、売上高は前年比1.7%減の66億ユーロ(約8,800億円)に後退した。ドライブ&コントロールテクノロジー事業部も2015年に、機械市場における重要なセグメントのさらなる景気後退の影響を受けた。
ネットワーク化ソリューションで、シンプルでより良い暮らしを実現
ボッシュは戦略的な目標として、コネクテッドモビリティ、コネクテッドプロダクション、そしてコネクテッドエネルギーシステムとビルディングのためのソリューションを提供することを掲げている。この目標に沿うかたちで、2015年にいくつもの新しいソリューションを発表した。
「ネットワーク化のためのテクノロジーは、資源の枯渇や都市化など、私たちの行く手に待ち構える課題を克服するための重要なカギとなります」(デナー氏)。その一例が、スマートにネットワーク化されたビルシステムだという。ビルのシステムをネットワーク化すると、エネルギー消費量を最大40%節約することができる。2020年までに、世界の総世帯数の15%にあたる2億3,000万世帯にスマートホームソリューションが導入される見通しだという。
ボッシュがスマートホームシステムの開発で特に重視しているのが、ユーザーエクスペリエンスで、新しいシステムは、単一のプラットフォームをベースに、空調設備や家電製品、オーディオ/ビデオ機器、照明、さらにセキュリティーシステムなどの機器類をスマートにネットワーク接続でき、スマートホームの機器類はすべてスマートフォンやタブレット端末から1つのアプリで遠隔操作できるようになっているという。