知能の逆転と「人間失業」。労働から解放された先の目的
白澤:ここまでAIのポジティブな活用法を伺ってきましたが、今後の社会変容について懸念されていることはありますか。
平野:技術進展には明るい未来だけではなく、正直絶望的な気分になることもあります。有史以来、知能の低いものが高いものを支配したことはありませんが、AIのほうが人間より頭が良い状況になりつつあります。気候変動などの危機も迫る中、一部の職種では既に「AIのほうが早くて正確だ」という現実があり、多くの人が「自分は必要だったのか」というアイデンティティクライシスに陥っています。
水野:私も人間側が自分の価値を保ち、意思決定していけるのか不安に思う部分はあります。会社で仕事をしていて「いらない」と言われれば一瞬存在意義を見失うでしょう。ただ、AIによっていろいろな雑用やこなすべき仕事が解決され、人間が自由になったとき、最後に残る「本当にやるべき価値」がいよいよ見えてくる時代になったとも言えます。
白澤:自分の仕事が代替されたとしても、そこで喪失感に囚われるのではなく、自由になった先にあるより大きな人生の目的に目を向ける必要があるということですね。

人間とAIの「違い」が希望になる。バイアスの可視化
出口:AIの台頭で存在理由が失われる「人間失業」の状況ですが、私はこれを逆にチャンスだと捉えています。これまでこの地球上には「人間」しかいなかったので、人間特有のバイアスは誰にもわかりませんでした。しかし今、人類史上初めて「人間以外の知能」であるAIが現れました。AIと人間のアウトプットを並べたときに「違い」が出てくれば、AIのバイアスと人間のバイアスの両方が初めて可視化されます。
平野:人間とAIの知能が逆転したとしても、その「違い」そのものに価値があるということですね。
出口:そのとおりです。科学技術の原則として、唯一の正しい測定法はなく、複数の異なる測定の平均をとることで真理に近づきます。どちらが偉いか、優れているかではなく、両者が「違うこと」自体が重要なのです。人間が引退してAIだけになれば、今度はAIバイアスの餌食になるだけです。我々がAIに抜かされたとしても、バイアスを可視化して相殺する役割は絶対に残ります。
白澤:人間とAIが違うからこそ、相互に補完し合う新しい共存の形が見えてくる気がします。
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