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企業価値向上のためのFP&A

中外製薬が挑む、R&Dの成果最大化に貢献する「進化版FP&A」──長期大型投資の意思決定の秘訣とは

ゲスト:中外製薬株式会社 谷口岩昭氏、滑川麻美氏、板倉正尚氏

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 革新的な医薬品の創出に取り組み、高い収益性を維持しながら成長を続ける中外製薬。売上収益1兆2,579億円、営業利益6,232億円、営業利益率49.5%という圧倒的な財務パフォーマンスを誇り、グローバルな時価総額ランキングでも独自の存在感を放っている。しかし、革新的な医薬品ビジネスの裏側には、多額の投資と長い研究開発の歳月、高い不確実性が常に付きまとう。同社はこのリスクをいかにマネジメントし、高度な経営資源配分を実現しているのか。その中核を担うのが、独自のFP&A(財務計画・分析)機能であり、事業部門の羅針盤として機能する「ファイナンス・ビジネスパートナー(FNBP)」体制だ。伝統的な経理の枠を超え、ときにはプロジェクト責任者と緊張感のある議論を重ねながらプロジェクトの命運をともにする「R&D(研究開発)ファイナンス」の実態について、最高財務責任者(CFO)の谷口岩昭氏、財務経理部の滑川麻美氏、R&D統括FNBPの板倉正尚氏の3氏に、FP&Aアドバイザーの池側千絵氏がインタビューし、その変革の全貌に迫った。

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企業価値創造を支える広範なCFO組織の役割

池側千絵氏(以下、池側):中外製薬は独自のビジネスモデルで圧倒的な利益率を維持され、時価総額でも国内製薬トップクラスの成果を上げています。本日は財務組織の取り組みについて、谷口CFOが統括する組織の全体像と価値創造の定義からお聞かせください。

谷口岩昭氏(以下、谷口):当社のCFOの役割は広く、財務・会計、FP&A、コーポレート・トレジャリー、税務、IRに加え、広報や「購買・調達」までを、私が統括しています。これほど広範なスコープを持つCFOは日本企業では珍しいかもしれません。

 「購買・調達」をファイナンスの傘下に置く理由は、経営の効率化、ひいては本質的な価値創造に直結するからです。工場のエンジニアリングから原材料、調達サービスに至るまで、品質と対価の合理性を突き詰めることは財務の重要な役割です。

 しかし、最も重視しているのは「経営が価値創造をどうサポートし、ナビゲートするか」です。医薬品産業における価値創造の一丁目一番地は「研究開発(R&D)」にあります。革新的な医薬品を継続的に世に送り出すために経営戦略やファイナンスが存在しており、各機能もそれぞれの立場からその実現を支えています。

谷口岩昭
中外製薬株式会社 取締役 上席執行役員 最高財務責任者(CFO) 谷口岩昭氏
日本長期信用銀行を経て、武田薬品工業にてグローバルM&A戦略の立案・推進およびPMIに従事。2017年リクルートホールディングスに入社し、執行役員として財務・経理・税務を担当。2022年中外製薬に入社し、上席執行役員としてファイナンス業務全般を担当後、2024年3月に現職。財務経理から広報IR、購買までを広く統括し、資本コストを意識したグローバル水準の財務戦略を牽引している。

ロシュとの戦略的アライアンスから始まった、プロジェクト軸で横串を通すマトリックス組織

池側:R&Dをコアに据え、早くから高度なプロジェクト管理を導入されていますね。FP&A組織である計画分析グループを率いる滑川さんと、R&Dポートフォリオ管理のファイナンスを統括する「ファイナンス・ビジネスパートナー(FNBP)」である板倉さんのこれまでの経歴を教えてください。

滑川麻美氏(以下、滑川):私は2002年のロシュとの戦略的アライアンス開始時にR&D部門へ異動しました。ロシュの「ライフサイクルチーム制」に倣い、中外でも全プロジェクトでチーム制を導入することになり、リソース(費用や要員計画)の管理担当の一期生として参画しました。これまで20〜30のプロジェクトに携わり、長らくR&Dの「コントローラー」としてポートフォリオマネジメントを追求してきました。2019年からはロシュの子会社である米国ジェネンテックに赴任し実務を経験。現場での経験とバリューチェーンの深い理解をもって、FP&A組織である、現在の財務経理部・計画分析グループのグループマネジャーに着任しました。

滑川麻美
中外製薬株式会社 財務経理部 計画分析グループ グループマネジャー 滑川麻美氏
1997年入社。R&D部門にてプロジェクトチーム制の黎明期からリソース担当者として参画し、長らくR&Dコントローラーとしてポートフォリオマネジメントに従事。米国ジェネンテック社への赴任を経て、2024年より現職。現場視点を持った全社FP&A組織の高度化を推進している。

板倉正尚氏(以下、板倉):私は博士研究員(ポスドク)を経て2005年に中途入社しました。入社当時は治験薬の分子特性解析や品質評価法の立ち上げなどを担当していた「製薬の研究者」です。その後、プロジェクトの製薬機能リーダーや製剤開発のマネジメントを経て、2021年からファイナンスの職務を任されました。製薬技術本部のFNBPを5年ほど務め、現在はプロジェクト・ライフサイクルマネジメントユニット(PLU)において、R&D領域全体のFNBPを統括しています。

板倉正尚
中外製薬株式会社 プロジェクト・ライフサイクルマネジメントユニット(PLU) R&D統括FNBP 板倉正尚氏
2005年に製薬の研究者として中途入社。プロジェクトリーダーやマネジメント業務を経て、製薬技術本部のファイナンス・ビジネスパートナー(FNBP)に転身。2026年より現職としてR&D領域(研究本部、トランスレーショナルリサーチ本部、臨床開発本部、製薬技術本部)のFNBP組織を統括し、現場と経営をつなぐ役割を担っている。

谷口:滑川の計画分析グループが全社視点のFP&Aであり、板倉はそこからの戦略を研究開発の現場へつなぐ役割です。当社では、研究開発においては研究本部、トランスレーショナルリサーチ本部、臨床開発本部、製薬技術本部というR&D領域の4つの本部に加え、製品・プロジェクト軸で研究開発活動を推進するPLUを設置しています。縦軸の部門組織と、横軸の製品・プロジェクトを掛け合わせたマトリックス型の組織を作っています。

池側:部門ごとにサイロ化しがちな日本企業において、横串の製品・プロジェクト軸が機能しているのは、ロシュとのアライアンスから得たグローバル水準の経営管理が根づいているからですね。このあと、ファイナンス組織の組織体制やレポートラインなどをお伺いします。

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現場感覚が実効性を生む、事業部とコーポレートをつなぐ「6割・4割」の二本足打法

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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