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山崎徳之の「テクノロジービジネスの幻想とリアル」

消えたバズワードから考えるキーワード・バブルとお金の関係

【新連載 ゼロスタート山崎社長のコラム Vol.1】

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 今回からテクノロジーとビジネスの関係について連載したいと思います。  テクノロジーとビジネスの関係についての記事なんて世の中に溢れていますが、ここでは「バズワードとしてのまだ実用期ではないテクノロジー」と「それをビジネスに活かそうとするときの傾向」について取り上げてみたいと思います。

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O2Oは消えたの?

 バズワードは次から次へと登場します。クラウド、O2O(オー・ツー・オー)、ビッグデータ、オムニチャネル、マーケティングオートメーション。最近だと人工知能・ディープラーニング、そしてフィンテック・ブロックチェーンあたりです。

 そもそもこれらが「バズワード」として定義されるとき、それはどんな意味合いがあるでしょうか。私が思うにそれは「流行のわりに実態がない」、つまり「キーワードバブル状態」なのではないでしょうか。もちろん将来への期待があるからバズワードになるわけで、上に挙げたものの中でもクラウドはすでに十分実用化のレベルになっています。

 これに対してO2Oはフェードアウトしてしまいました。オムニチャネルに吸収されたといってもいいでしょう。 ビッグデータやオムニチャネルを見てみると興味深い傾向があります。バズワードであった頃は実用化はそれほどでもなかったのが、数年経ってようやくその兆しが見え始めています。人工知能やフィンテックに至ってはまだ実用化というには程遠い状況だと筆者は思います。

「言いやすい」と「言いたい」

 ところで余談ですが、こうしたバズワードはその流行っぷりの多寡があります。その要素の一つに、「言いやすさ」もっというと「言いたさ」がある気がします。アルファベットではなく、カタカナ言葉や日本語として「言いやすい」、「言いたい」という語感が重要です。

 ディープラーニングという言葉が、徐々に人工知能という言葉に置き換えられてきたのは、そしてマーケティングオートメーションがバズワードとしての寿命が短かったのは、この「言いやすさ」が要因ではないでしょうか。

 ちょっとアレな例えですが、中身についてそれほど理解していないおじさんが飲み屋で女の子に「フィンテックって知ってる?フィンテック。これがすごいんだよ」と言ってるシーンは容易に目に浮かびます。 でも「ディープラーニングって(略」「マーケティングオートメーションって(略」だと言いづらいし間違える可能性もあります。

 クラウドやビッグデータも、言いやすかったというのは大きいのではないでしょうか。たとえば、今の人工知能と言われるものは、そのかなりの部分が機械学習の言い換えですが、「機械学習って(略」だとあまりウケないでしょうが「人工知能って(略」だといかにもウケそうです。そういう意味で、フィンテックというのはここ10年来でもバズワードとしての言いやすさと言いたさでは抜群だと思います。

メディアとバズワードの関係

 さてそんなバズワードですが、こうした「キーワードバブル状態」というのはどうして生まれるのでしょうか。それはもちろん、ひとえにメディアと業界の事情が原因です。

 とりあえず人工知能の記事を出しておけば、とりあえずフィンテックの記事をのせておけば、それはそれなりのリーチを叩き出します。それはそういう状況を利用するメディアの問題なのか、もしくは利用されている読者の問題なのか、これはまあ鶏と卵というか、どっちもどっちでしょう。

 情報の価値というのは知識の格差があるために発生します。全員が知っている情報には価値はありません。「自分は知ってるけど他人は知らない」から価値があるのです。それはメディアと読者の間もそうですし、そのメディアの記事を読んだ読者と読んでいない読者の間でもそうです。

 気圧が高い方から低い方に風が吹くように、標高の高い方から低い方に水が流れるように、知識の多い方から少ない方に情報は流れるのです。そういえばお金は多い方から少ない方には流れないですね。哀しいです。

 さて風が吹いたり水が流れるのは自然現象です。そこには誰も否定できない気圧差や標高差があります。 ところが情報の場合、その情報の正しさとか価値は、情報の流れには影響しません。

 ここが大変重要なポイントです。実態がなくても、記事に嘘があっても、情報は流れるのです。なのでキーワードバブルだと言えるのです。その情報に実際に大変な価値があればそれはバブルではないですし、そうした場合ではバズワードとは呼ばれないのではないでしょうか。

 まあメディアでバズワードが乱舞してPVが高騰し、それを見たおじさんが飲み屋で女の子にえらそうに知ったかぶりトークを披露しても、そこまでは大した実害はありません。問題はそれがビジネスの世界で恣意的に活用されてしまうことがあるということです。バブルは実体経済ではないからバブルなのですが、実体経済に影響を及ぼしてしまうことがあるのです。実体経済に影響を与えるということは、すなわちお金が動くということです。バズワードによって発生する主な実体経済、もっと言えば企業活動への影響は、資本の増加、負債の増加、収益の発生です。

 わかりやすく言えば資本の増加は増資、負債の増加は借り入れ、収益の発生は売上による粗利です。つまり全て、企業におけるキャッシュを増やすための行為ということです。これは当たり前で、恣意的にバブルを活用するということは、自分にとってメリットのあることをするということです。

 手元のお金を減らすためにバブルを活用する人はいないでしょう。では実際に、どうやってバズワードが実体経済で活用されるのか、もっというとお金を増やすために利用されるのか、これについて次回考えてみたいと思います。

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この記事の著者

山崎 徳之(ヤマザキ ノリユキ)

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