セコムグループの財政面の変遷
最後に注目したいのが、セコムの財政面の健全性についてである。先に示した一覧表にあるとおり、同社は事業領域を拡大するために非常に多くのM&Aを繰り返してきた。創業者で取締役最高顧問の飯田亮氏は「社会的に意義のある事業なら、リスクを恐れず挑戦する」との方針を打ち出し、「いずれ既存事業と結びつく」と直感的に判断した案件も多いという。それらの実行には巨額の資金やリスクが伴うものだが、セコムの財務状況は下図のとおりである。
直近の15年3月期の同社の自己資本比率は53.6%、有利子負債比率は8.2%と安定性がかなり高い状況にあることが見て取れる。03年3月期には合計2,100億円以上もあった有利子負債額が、15年3月期には700億円へと約3分の1にまで圧縮され、自己資本比率もここ数年は50%を超えて推移していることも分かる。
この財務体質を支えているのが、祖業のセキュリティサービス事業の利益である。セグメント別の利益で見ると、同事業だけで15年3月期は1006億円の利益を創出している。この数字は業界2位の綜合警備保障のセグメント別利益(セキュリティ事業 238億円)の約4.2倍であり、圧倒的な利益創出が際立つ。
企業ドメインを軸に、「安全・安心」そして快適で便利な社会の創造のために大胆かつ柔軟にM&Aを活用するセコム。単なる事業多角化ではなく常にシナジーを前提とした買収により、高い成長性を実現している。
積極的なイメージがある同社だが、一方で海外展開は思いのほか進んでいない。
04年3月期に117億円だった海外売上高は15年3月期では441億円と売上高こそ3.7倍に成長しているが、ボリュームの大きい国内事業も成長しているため、売上高構成で見ると2%が5%になった程度で、微増に過ぎない。
今後のセコムのM&Aでは、海外案件に注目が集まりそうだ。
この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。
本記事は、M&A Onlineに掲載された記事を再編集して掲載しております。
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