祖業依存体質からの決別し、00年以降の積極的なM&A戦略
事業領域を拡大させ、いくつもの事業が祖業と並び立つセコムは、特に00年代中盤から積極的なM&Aに取り組んでいる。05年8月に行なった万引き防止システム最大手の高千穂交易の株式取得を皮切りに、同年10月にはビル管理大手の東京美装興業へ出資、その2カ月後にも住宅・不動産開発中堅の細田工務店へ資本参加した。また、06年10月には警備保障中堅の東洋テックの株式を取得して持分法適用会社化し、11月にも防災機器大手の能美防災を子会社化した。
さらに、07年5月には東京美装興業の出資比率を引き上げ、同社を持分法適用会社としている(ただし、10年4月、保有する全株式について、東京美装興業の創業者によるMBOに応募)。12年1月には、生活グループの連結子会社で消防用設備全般の工事施工、機器販売および保守点検業務を行うLIXILニッタンを完全子会社化。同年9月には東京電力の子会社であるアット東京を子会社化し、日本最大のデータセンターを保有することになった。
それらの一連の取り組みは、同社の事業領域を拡大させ、従来の事業とのシナジーを生みながら発展している。そして冒頭に紹介したとおり、今や祖業のセキュリティサービス事業と並び立つほどに成長しているのだ。
セコムのM&Aの目的は「企業ドメインの強化、補完」というシンプルさ
一連の買収・資本参加は多岐に渡るが、セコムの目的は一つである。それは、企業ドメインである「社会システム産業」の強化、補完である。
同業の東洋テックの場合は言うまでもないが、例えば、万引き防止システムの高千穂交易と連携すれば小売店への営業を強化できるし、ビル管理の東京美装興業の顧客層を活用すればオフィス需要を開拓できる。細田工務店との提携では、同社が分譲する戸建て住宅街へのサービス提供が容易になる。能美防災の防災機器と融合すれば、付加価値の高い新サービスを開発できる。LIXILニッタンの子会社は、同じく防災のパイオニアである能美防災とともに、次世代型の防災システムの開発を可能とした。そしてアット東京のデータセンターは、「社会システム産業」の構築を目指すセコムグループの情報基盤を大きく強化することにつながっている。