コーポレートアクセラレーターの代表格「TechStars」
まずは連載第一回目でも紹介した「TechStars」について詳しく掘り下げていく。TechStarsは、ディズニーアクセラレータープログラムにコーディネータとして参加したことで知名度を上げ、今ではコーポレートアクセラレーターの代表格として認知されている。TechStarsの大きな特徴は「メンター主導型」であることだ。バッチごとに様々な分野の専門家を40人以上集め、ベンチャー企業へのメンタリングを行うことによって、ベンチャー企業の成長を支援する。
AirbnbやDropboxを輩出したシードアクセラレーター「Yコンビネーター」と比較されることも多いTechStarsだが、両者の違いはどこにあるのだろうか。1バッチあたりYコンビネーターは80社前後を選抜し、”ベンチャー同士を競わせる”のに対し、TechStarsは少数精鋭の10-20社を選抜し、40人をこえるメンターのサポートによってベンチャー企業をじっくり育てる。そのため、一般的にベンチャー企業が創業5年後に生き残っている率は15パーセントから50パーセント程度な事実に対し、TechStarsのアクセラレータープログラムに参加したベンチャー企業は90パーセント以上が生き残っている。事業の実現可能性を考慮し、有望な10-20社に絞って投資をしているものの、この数字からメンタリングの重要性が読み取れるだろう。特に創業したてのベンチャー企業は右も左もわからず、事業の核が揺らぐこともある。なので、メンターは起業家に自身のアイデアを押し付けるのではなく、専門分野を活かしてサポートすることによって、勝ち方を示してあげる必要があるのだ。
また、Yコンビネーターがシリコンバレーに拠点を置くのに対し、TechStarsは少し外した都市に進出している。シリコンバレーのように競争の激しい地域であえて戦うのではなく、少し外れた地域にいる優れた人材をすくい上げることが狙いだ。
そして、TechStarsは3日程度の短期間でサービスを立ち上げるワークショップを世界中で開催している「Startup Weekend」を買収したことでも知られている。TechStarsによる買収後も継続的にStartup Weekendは開催され、TechStarsが提供するアクセラレータープログラムへの導線づくりに一役買っている。現在アメリカではアクセラレータープログラムが、ベンチャー企業にとってのインフラのような存在になりつつある。そのため、ベンチャー企業が成長するための道程が以前に比べて仕組み化されていて、起業のしやすい環境になっていることは間違いないだろう。