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【出張版】M&A Online

IPOに至らない“リビングデッド”なベンチャーはどこに向かうべきか?

日本ビジネスイノベーション代表取締役の西堀敬氏に聞く、会社継続学

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IPO件数の推移とベンチャーの事業継続

 私は、2011年に「事業の継続を支援する会社」として日本ビジネスイノベーションを創業しました。事業継続を目的とした株主構成の見直し、事業売却などを支援しています。こうしたビジネスモデルを思い立ったのは、長く新規上場会社の情報提供サイト「東京IPO」の編集長として、企業の上場を見つめてきた経験があったからです。

 日本での上場企業数は年間100~200社で推移し、活発な状況が続いていました。私はその中で上場支援などをしてきましたが、ライブドアショックで新興市場バブルが崩壊して年間のIPOが100社を割り込み、リーマンショックの翌年には19社にまで落ち込んでしまいました。

出典:「新規公開株で大きく稼ぐ! IPO投資の基本と儲け方ズバリ!」西堀 敬著(すばる舎刊)出典:「新規公開株で大きく稼ぐ! IPO投資の基本と儲け方ズバリ!」西堀 敬著(すばる舎刊)

 もともと志のあるベンチャー企業でも、上場の夢を成就できるのはほんの数パーセントから10パーセント程度にすぎません。仮に1年間に150社のIPOをする企業があるとすると、上場を志望する企業の数はざっと見積もって1500社~2000社にも上ります。逆の言い方をすれば、全体の1割も上場できないのが実情です。従って、リーマンショックなどで上場する企業が少なくなっても、水面下で上場を目指している企業は一定の数に達しているわけです。

 そうした未上場企業の中には、ベンチャーキャピタル(以下、VC)を入れて資金調達したものの、上場に至らないベンチャー企業も多いです。会社としてはつぶれていないが、事業としては成り立っていない「リビングデッド」状態に陥っていたり、黒字になったと思ったら翌年は赤字になるような、業績が鳴かず飛ばずの状態だったり。そういう企業は、やがてVCファンドの償還期限が近づき、何らかの結論を出す必要に迫られます。

 例えば、リビングデッドの状態であれば、企業の価値は限りなくゼロに近い状況ですから、VCは社長に1株1円でいいから買い戻してもらえないかと持ち掛けたりするケースが多く、そうして決着を付けようとします。VCとしては、損は損でも構わないから確定したいわけです。

 VCの基本的なビジネスは、貸し付けた資金をすべて回収しないと金融庁からお叱りを受けてしまう銀行とは異なり、確率論で動いています。投資先100社のうち、1社でも500倍のリターンをもたらしてくれれば、あとの99社がだめでも事業として成立するわけです。

 一方でリビングデッドのような場合と違い、真面目に上場に向けて努力も準備もしているが、いまひとつ業績が伸びず、償還期限を迎えてVCが手を引くケースも少なくありません。この場合もオーナーが株を買い戻すことになりますが、それなりに売り上げがあり、純資産もそこそこある財務状態だと、1株1円というわけにはいきません。とは言え、それなりの株価で買い戻すとなると、オーナーに資金がなくそれもできないことが多い。その時、選択肢として最も有力なのは第三者への譲渡になります。

 ここでやっかいなのが、VCはたいていの場合1社ではなく複数社が関わっていて、それぞれに償還期限が異なることです。あるVCは期限間近だが、別のVCはまだ始まったばかりで、期限まであと7年ある、というように。こういう時の調整は骨が折れますが、オーナーがひと言「上場は諦めました。私の持っている株も含めてイグジットします」とすべての投資家にはっきり宣言すればまとまることも多く、そうなればあとは株価の話になります。ただ、オーナーの気持ちが整理できなくて途中でつまづくこともあります。

 と言うのも、上場は限りなく困難な状態となっても、20~30人の社員がいて成長こそしないがそれなりに資金は回っており、世間的にも「社長」と言われて心地よい日々が続くと、オーナーがその状況から脱することが難しくなってしまうからなんです。ただ、期限はありますので、やはりオーナーは決断しなければなりません。

 ここで私が重要視しているのが、単にオーナーがVCの持っている株を買い戻すだけでなく、企業のステージに見合い、かつ上場までには至らないが価値のある事業を継続できるように、会社を見直すことです。オーナーは創業時の夢を他者にバトンタッチし、自身の利益にもなる、ということです。単なる譲渡ではなく、その企業の継続を目標に支援するわけです。その過程で必要に応じてM&Aも活用します。これが、私が立ち上げた日本ビジネスイノベーションの行う事業継続支援です。

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「株主構成」と「経営者」の両方ではなく、片方を変えてみる

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