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Design Ethos 生活文化力という資質

“ビッグシフト”を日本の好機にする「外部の取り込みや内部の異質化」と「感性への自負」

Design Ethos 生活文化力という資質:第3回

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 本連載では、今後より重要視されるクリエイティブ*には「生活文化力」という資質が不可欠だと議論を進めてきた。生活文化力とは、デザイン手法やデザインプロセスのような手段ではなく、クリエイティブが保持すべき資質であり、「美と質の追求」「感性への自負」「異質の受容」という3つの要素からなるとしている。心技一体という素晴らしい日本語があるが、これに例えるならば、デザイン手法は技、生活文化力は心である。高いクリエイティブ性を発揮するために、技と同様に心についても沢山の議論があってほしい。アメリカ大統領選後、世界の一部がリードする意味でのグローバリゼーションが幻想であったことの露呈を踏まえつつ、2つ目要素である「感性への自負」というテーマを取り上げたい。 *デザイナーに限らず、新商品企画やブランド戦略など、新たな価値の創造に責任を負う人材。

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ブリグジットやアメリカ大統領選後の今が、日本のクリエイティブの好機になる

 ブリグジットとアメリカ大統領選が象徴するのは、グローバライゼーション(価値観や市場の一元化)という幻想が壊れつつあるという事実だ。そもそも、文化、宗教、経済などにおける無数の違いや格差があるなかで、世界の一部がリードする強制的包括には無理があったと思っている。そして、隠されながらも拡大していった格差や違和感が、SNSのようなツールにより、真のデモクラシーの実態が明るみに出るようになった。ブリグジットが起きた翌朝、ロンドンにあったのは「自分たちが知らない世界を顔面に突きつけられた戸惑い」だった。「はっ?え?だれが?」と。ある程度の収入を得ながらロンドンで生活をしている層からは見えていなかったイギリスがあったのか、というシニカルな発見である。

 これまでのように一元化して考えることが難しい、より複雑で先が見えにくい社会の中で、新たな価値やビジョンを打ち出すことが出来るクリエイティブへの期待が高まっている。「イノベーション」と謳うと他人事に感じる方もいるので敢えて日常的な言葉に言い換えれば、既存の製品やサービスやビジネスモデルの枠を超えた新しい発想と言えるだろう。そのような発想が出来るクリエイティブが担う責任・チャンスは大きい。

 日本人にとっても非常に前向きな変化でもあると思っている。「新しい発想(イノベーション)」の肝は「異なる価値観の統合」であり、つまり、多様性が欠かせない。対欧米比較をしたときに、衣食住、価値観、文化、コンテンツといった様々な面で非常にユニークな面をもつ日本人は、彼らにとって絶好の「異なる価値観」である。こうした理由で、先が見えない社会というのは、日本のクリエイティブにとって、まさに好機だと思うのである。

 そして、そうした好機を生かすために、「生活文化力」の要素の一つに挙げる「感性への自負」が重要になる。

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この記事の著者

池田 武央(イケダ タケヒロ)

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