抜擢する条件は、何よりも「人望」
サイバーエージェントは人材をどんどん抜擢し、事業意志を持つ人間には、若手でも役員や、子会社の社長に登用してきている。こうした取組みを推進してきた人事部門のリーダーで取締役の曽山氏は、サイバーエージェントの抜擢の条件は、ずばり「人望」だと言う。
管理職への抜擢には、役員会議で決議を行います。能力や業績は言うまでもありませんが、管理職登用の決議の基準は「人望」です。すごく仕事が出来ても人望が無い人は、役員にしない方が良いという考えです。(曽山氏)
周囲の人望が厚く、評判の良い人間はリーダーとしてどんどん抜擢される。これがサイバーエージェントの事業成長の原動力だという。
人望は、部下や同僚、クライアントとの信頼関係、そして仕事以外の「オフ・ザ・ジョブ」での評判も関係してくるという。
こういうと当たり前のようだが、企業の人事の場合「オンとオフ」での評価は難しい。モデレーターの水谷氏は、仕事のオンとオフとリーダーシップの関係について、日本ラグビー協会の中竹氏に話をふった。仕事の「態度」を重視する曽山に対して、中竹氏は、「態度の悪さ」はむしろ伸びしろと捉えているという。
まず生活態度を変えろ、と言った。
中竹氏は、「本人の名前を出して申し訳ないが」と断りつつ、「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」の日本代表の若手、佐々木凛平氏の話を紹介した。U20の本大会の前のフィジーでの遠征の時のエピソードだ。
佐々木選手は、17歳の時から発掘され、高校時代は彼の能力でチームを引っ張っていたという。ところが、その天才的な能力ゆえ、味方とのパスのやり取りが不十分で、独走してしまい、敵にボールを奪われてしまうことが多かったという。パスが出来ない佐々木選手に、中竹氏は面談でこう言った。
お前、普段から他人のことを考えていないだろう。ミーティングもぎりぎりに来る。自分が食べた後は、食器も片付けないし、挨拶もしない。仲間に挨拶もしない。朝起きたらおはようと言え、と。(中竹氏)
能力が高すぎて、1人で突っ走ってしまう佐々木選手に対して、中竹氏は徹底して「オフ・ザ・ジョブ」の指導をおこなった。そして、ツアーの後半ではパスが交わせるようになりチームの連携力が高まったという。
ラグビーではなく、生活を変えることで見違えるほど成長したのです。ここにコーチングの本質があると思います。本当にスキルを伸ばしたい時、「そのこと」ではなく別のことをやらせるのです。(中竹氏)
普段伸ばそうとしている部分はあまりにも慣れ親しんでいる。「オフ・ザ・ジョブ」から、個人の能力を伸ばすという方法があるのだという。
若い世代は人間的に未熟な奴もいます。同じ能力で「オフ・ザ・ジョブ」の能力が低い人間は、逆にポテンシャルが高いともいえます。(中竹氏)