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都市と地域のイノベーション「Creative Circuit」

都市の“文化的背景”を捉える起業家「カルチャープレナー」と「社会課題解決型ビジネス」

Creative Circuit #1:ゲスト 多摩大学大学院教授 紺野登氏(第3回)

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 「イノベーション」が起こる“場”として、IoTなどの文脈でもその注目度が増す「都市」。また、シェアリングエコノミーの主戦場となる「地域」や「都市の街区」。イノベーションが起こる場に注目が集まっている。連載『都市と地域のイノベーション「Creative Circuit」』では、都市と地域のイノベーションが起こる場・生態系を「Creative Circuit」と命名し、その生態系にどんな要素、どんなプレイヤーが必要なのかなどを探索する企画である。  第1回のゲストは多摩大学大学院教授 紺野登氏。前回は、IT企業がテクノロジーで進化させるこれからの都市と、21世紀型の都市に必要となる「構想(ビジョン)」「グラスルーツ的な思想」「デザイン」とは何かを議論した。本編では、紺野氏へのインタビューの最終回として、「Creative Circuit」に必要となる、「問い」を起点に始まる新しいビジネス、地域文化を理解しその地域に根付くビジネスを起こす起業家「カルチャープレナー」、地域の課題を解決する「地域間ネットワーク」、社会課題の解決がビジネスにつながるSDGsと都市の関係を議論した。

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現代のクリエイターが集うコミュニティという「場」が求められる理由

本村:
 ここからは、21世紀型の都市で暮らす人々についてお話しできればと思います。

紺野:
 いま都市に住む人は、テクノロジーをうまく使って、ある意味、個としての「野性的」な力を持ちつつあるのではないでしょうか。つまり、個の力が生きる時代です。新しいビジネスや文化をつくっている人は自ら「問い」を立て、その「問い」に対する解決策をデジタルテクノロジーを存分に活用し提示する能力を持っている。例えば、配車サービスのUberは、創業者が雪降る夕方のパリでタクシーをつかまえるのにとても困ったという体験がアイデアの源泉になったというのは有名な話ですよね。

本村:
 日常的に「このようなサービスが必要なんじゃないか」と問いを立てることが大事なんですね。

紺野:
 そうなんです。そして「問い」と同じくらい大事なのが、その「問い」をサービスに落とし込むためのデジタルテクノロジーの活用ができることです。日常の中の疑問や課題の解決に取り組みやすくなった時代とも言えるかもしれません。

本村:
 あくまでツールやテクノロジーは手段でしかなく、日常の中に違和感を覚えるような、人間らしい感覚も大事ですよね。Airbnbも、旅先で現地の人と同じように暮らしたという根源的な感情から始まったわけですしね。

紺野:
 もう1つ大切なのが、生産者と消費者の境界が曖昧になっていること。昔はつくり手と受け手が完全に切り離されていたんですよね。生産者と消費者は分離していたい。しかし、1970年以降に情報化社会になって、つくり手しか持っていなかった情報が“民主化”して、受け手がものづくりに関われるようになっていた。アルビン・トフラーが「プロシューマー」と呼んでいましたが、現代は「創造者の時代」になりました。しかし工場でつくるわけではない。ファブラボや3Dプリンタやレーザーカッターが置いてある会員制のものづくり工房「TechShop」のような場所がそれにあたると思うんですよ。

本村:
 TechShopのようなデジタルファブリケーション用のスペースがなぜ大切なのでしょうか。

紺野:
 現代のクリエイターが集まるコミュニティスペースとして、TechShopの実験は象徴的だったと思うからです。元CEOのマーク・ハッチは「昨日までスターバックスでMacをカタカタ叩いていたような人々が、突然プロトタイプをつくりにTechShopにやってくるんだよ」と言っていたんです。

本村:
 未経験の人がいきなりものづくりに関心をもつのでしょうか。また、実際にすぐできるようになるんですか。

紺野:
 最初は3Dプリンタの使い方の講習を受けるなど、基礎的なことを学んでいくんですよね。これが革命的だった。なぜならこれまでクリエイターと言えば、デザイナーやエンジニアなど、コンテンツやサービスを供給する側の立場の人を指していたんです。彼らはそれによって対価を得ていた。でも、TechShopに来る人はお金を払って、新しいものづくりをしている。

タイトルTechShop(2013年)の写真

本村:
 なるほど。お金を貰ってコンテンツを作るのではなく、お金を払って何かをつくっていると。デジタルツールの発達で、未経験の人がクリエイティブの制作に参加しやすくなったということですね。

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