21世紀になり、暮らし方、働き方は大きく変化している。2016年には米国の労働人口の35%がフリーランスとなり、2020年には労働人口の半分以上がフリーランスになると予測されている。日本も2017年は「働き方改革」元年と呼ばれ、大手企業の副業解禁や、リモートワーク導入が話題となっている。
このように働き方が大きく変化しているにも関わらず、人々が暮らし、働く場所である「都市」は100年前のモデルだ、と多摩大学院教授の紺野登氏は語る。今こそ都市はアップデートされるべきなのではないかと。
働き方や暮らし方が大きく変わる中で、100年間も“アップデート”されていない「都市」
本村:
今回、都市と地域における“イノベーションの現在地”を探るため、紺野先生にお話を伺えればと思っております。まず、現在の都市が抱えている課題と、20世紀型の都市の特徴を教えていただいてもよろしいでしょうか。
紺野:
私たちの働き方や暮らし方が大きく変わったにも関わらず、都市が100年前からアップデートされていない、これが最も大きな問題だと捉えています。19世紀末から20世紀初めのオートメーション、石油化学、合成繊維など、きわめて「技術的な」第二次産業革命の波を受けて、1920年代頃からドイツなどの国でホワイトカラーが勃興しました。ホワイトカラーの登場とともに、郊外の住宅地に住み、平日は仕事のために都心に通勤し、休日はショッピングに出かけたり遊園地でレジャーを楽しんだりする郊外型のライフスタイルが生まれたわけです。彼らのライフスタイルに最適化するように、都市は3つの基本的技術──①鉄道や自動車などの通勤のための「高速交通機関」、②高層ビル用のエレベーターつまり「垂直交通システム」、後には③コンピュータシステム「情報技術」によって発展してきたんです。それが最近変わり始めた。
本村:
都市を構成する要素が変化しない中で、私たちの働き方はどのように変化してきたのでしょうか。
紺野:
例えば米国の場合、1960年代から70年代にかけて、労働階級(組合)の力が衰え、さらに中間層(中流階級)の崩壊が始まりました。20世紀末からは専門職やナレッジワーカーが登場しますよね。最近では、リモートワークという働き方や、会社に属さないフリーランスという就労形態も増えています。毎日の通勤はもはや不要です。AIなどの普及によって20世紀の労働という概念すら陳腐化しつつあって、単純な時短型「働き方改革」は疑問視されています。こうして私たちの職種や働き方がアップデートされつつあるにも関わらず、都市は100年前にデザインされた状態から変わっていない。情報化社会を経て知識社会となった現代に見合う都市のあり方を構想し、都市をイノベーションすることが求められているんです。それにはこれまでとは違う技術が活用されます。コミュニケーション技術、個人の能力拡張技術(AIやIoT)、新素材などです。