先進国の無関心化は歯止め、日本はマイナスが続く
今回のグローバル消費者調査は、世界33カ国 、約25000人の消費者を対象に行われた。
かつては多くの商品の中から、自分の好みで選択・購入していた消費者は、その後、事前に調べたり比較検討の上で購入する段階を経て、今では比較検討すら放棄し、それほど欲求のないまま購入するという「無関心化」の段階に到達しているという傾向が、昨年の調査に表れていた。
今回の調査の主眼としては、1)昨年の無関心化傾向がどのように変化したか、2)企業が消費者とどのような関係を作るべきか、の2点を明らかにすることだったという。
欧米では歯止めがかかったが、日本ではさらに増大する無関心度
無関心傾向の調査結果としては、以下となった。
- 無関心化の傾向は昨年に引き続き、先進国において顕著
- ただし、大半の先進国では無関心化の流れに歯止めがかかっており、米国やドイツ・フランスでは企業ブランドに対するロイヤリティも一定を保持している。
- 一方、日本においては無関心化がさらに進展し、67%の消費者が製品・サービスの購入時に十分な検討を行わない結果。
- 新興国では、未だ無関心化の潮流は限定的
グラフでは、「先進国では無関心化が進むと共に商品やサービスへのロイヤリティも低下しつつあるが、昨年に比べると欧米先進国はやや回復。日本はさらに低下」という傾向が見て取れる。
ミレニアル層の興味発掘に成功した米国
これについてアクセンチュアは、「無関心化が進む中でも高いロイヤリティを保持している米国では、18歳から34歳の若年層での高ロイヤリティ形成が全体をけん引している。これは新たに登場したサービスや製品が、革新性やパーソナライズによる新たな体験を提供することで若年層のロイヤリティに寄与している」(アクセンチュア 百瀬氏)と背景を分析している。
新たな体験を提供するサービスの台頭という意味では、スマホアプリによる金融サービスなどのフィンテック関連や、Uberなどのライドシェアなどのビジネスが上げられるが、こうしたサービスへの「関心度」は日・米とも利用や購入に前向きという結果が出ている。
課題はこうしたサービスの浸透状況にあり、シェアリングサービスやフィンテックとも日本が圧倒的に遅れていることであるという。
「新たなサービスを日本企業が提供し切れていないことが、消費者の無関心、低ロイヤリティの背景にあるのではないか』(アクセンチュア 石川氏)
日本企業は顧客価値を再定義し、新たな関係を構築せよ
「日本の消費者の製品への無関心は、どれを選んでも同じという諦めと、何を買っても大丈夫という安心感でもある」と石川氏は推測する。
消費者から見れば、情報過多であり食傷気味という傾向は共通する。しかし大きな違いは米国の場合こうした閉塞感を突破する、Uber、Amazon、Netflixなどの創造的破壊者による新サービスがミレニアル世代の関心を発掘出来ているのに対し、日本はそれが出来ていないことだとし、日本企業の消費者との関係の再構築のための以下のような考察と提言を行なった。
- 顧客価値を再定義する:消費者起点でのドメインの再定義、本質的価値の見極め
- 独自プラットフォーム構築:顧客理解の深化を可能とする、自社固有のプラットフォーム
- 絶え間ない変化:他に先駆けた新規テクノロジー、サービスの試行、導入
いずれも困難な課題ではあるが、こうした意識で変革に取り組むことで消費者の興味・関心を回復し関係性を強化することは可能だ、と石川氏は語った。