ミレニアル世代が労働者の50%になる2020年に、働き方はどうあるべきか?
講演は、パテル氏のこんな問いかけから始まった。
この会場の中で、Eメールを仕事上で使っている人はどのくらいいますか?
もちろん全ての人が手をあげる。パテル氏は続けて問う。Eメールの送信欄のCCという略称の意味を知っているか、と。CCとはカーボンコピーの略である。EメールのCCという機能は、かつて文書を誰かに送るときに、送付する用紙の下にカーボン紙を置いて複写し、コピーを控えとして取っておいたという、19世紀に生まれた風習の名残なのだ。
次にパテル氏は会場に、Googleドキュメント等のオンライン・ドキュメントのサービスを使った人がどれだけいるかを問いかけた。多くの人が手をあげる。パテル氏は問いかける。「この手のサービスを開くと、常に『用紙』らしき見た目のものが現れるのはなぜでしょうか」と。その理由は、ユーザーが作成したデータを用紙に印刷すると想定しているからだ。
こんなことをパテル氏が会場に問いかけたのには理由がある。これまでのビジネスツールの開発者たちは、今までずっとアナログで使っていたものを、いかにデジタルに置き換えるかを念頭に開発してきたのだと、聴衆にしっかりと認識させるためだ。
しかし、こういった発想ではもう立ちいかなくなる、とパテル氏は話す。なぜなら、ミレニアル世代と言われる2000年代以降に成人になる人々が、2020年に世界の労働者の半数を占めるようになるからだ。*1
*1: 参照:Millennials at work Reshaping the workplace(PWC)
ミレニアル世代は、いわゆるデジタル・ネイティブといわれ、小さい頃からデジタルが身近で、スマートフォン、SNSに触れながら育ってきている。紙をあまり使わない、ということを筆頭に様々なツールの使い方が違い、ツール自体も異なっている。
この世代は他の世代とは価値観が異なる。一般的に言われているのは、個人主義で、上下関係を気にせず自分の意見を自由に発信し、上から物を言われることを嫌うということだ。また、自分の意見が会社でなかなか通らなかった場合、上の世代はじっと機が熟すのを待つかもしれないが、ミレニアル世代は転職してしまうだろうとパテル氏は説明する。
このミレニアル世代は、日本で「ゆとり世代」と揶揄される年代とほぼ同じだ。日本は少子高齢化の影響で世界とはやや事情が異なり、2020年に労働者の半数がミレニアル世代になるというわけではない。しかし日本の場合、ここ数年は人手不足の傾向が見え、人材獲得競争が激化している。
パテル氏はいう。
労働人口にしめる比率が低い時は『ミレニアル世代は、これだから困る』と言っていればよかった。けれど、労働者に占めるミレニアル世代の割合が増えてきた時、そういっていられるのでしょうか。この世代が魅力を感じる職場を作らなければ、良い人材を逃すのではないでしょうか。
そのミレニアル世代に喜ばれるビジネスツールとなりそうなものの一つが、パテル氏がアジア太平洋地域責任者を務めるWorkplaceだ。