データに基づくブランドマネジメントを実現する「IMC」と「パーセプションフロー」
第二部は、「顧客データからマーケティングの全体像を可視化する ~データドリブンIMC~」と題して、自社のビジネスにパーセプションフローモデルを取り入れている荻野氏による、データに基づいたIMC(Integrated Marketing Communication:統合型のマーケティングコミュニケーションのこと)設計の方法が語られた。
パーセプションフロー設計時、課題となるのは消費者の態度変容をどのように捉えていくかだ。そこで荻野氏は、建設業界で行われている設計図のリバースエンジニアリングにヒントを得て、消費者のリアルな態度変容プロセスを調査し、再現性の高いパーセプションフローの作成に取り組んでいる。
そのステップは、次の通り。
まずオンラインの定性調査でターゲットとなる消費者の態度変容プロセスを調査し、ひとりひとりのパーセプションフローを作成。それを個票としてまとめ、再度定量調査を行い、精度をあげていくという方法だ。
とくにブランドコミュニケーションの支援が多い荻野氏は、消費者のエモーショナル・ベネフィットに着目し、「自己承認の獲得・社会的承認の獲得・自己一貫性の維持・社会的一貫性の維持」という4つのセグメントにターゲットを分類。そしてそのセグメントごとに、パーセプションフローを作成している。
パーセプションフローがあることで、市場創造からブランド広告・販売促進・プロモーションなど一気通貫してマネジメントできますし、施策ごとの効果測定が可能です。さらにエージェンシーに対して客観的なブリーフを共有することもできます。(荻野氏)
クライアントとエージェンシーの間には、しばしば非効率な作業進行が発生する。その理由のひとつに、想定外のアドバイスやダメだしが出てしまうブリーフなきフィードバックの場がある。パーセプションフローに基づいたブリーフがあれば、それを元に相違点の確認をするという正しいフィードバックを行うことができるというわけだ。
またパーセプションフローは、クライアントやエージェンシー同士の共通言語にもなる。共通言語があれば、ステークホルダー同士のコミュニケーションミスも減り、プロセスの改善にもつながっていく。
「とくにブランドマーケティングは、パーセプションフロー・モデルなしでは実現できない」と荻野氏。顧客データが大量にある現代だからこそ、データドリブンを用いることに活路がある。運用とテストを繰り返した精度の高いパーセプションフローを、マーケティング活動の基盤にしていこうと提案した。