デザイン的な思考とアート的な思考の相違点と共通点──デザイン・アート・ビジネスのトライアドとは?

第1回

 今まではデザイン業界でのみ用いられてきたメソッドである「デザインシンキング」が一般のビジネスの場でも活用され、新たな事業を生み出す思考法としては、「アートシンキング」にも注目が集まっています。ただし、それぞれの定義や役割が曖昧になっているような気がします。
 音楽には、ドミソのように2音ではなく3音で構成される「和音(コード)」というものがあります。ビジネスにおいてデザインやアート、ビジネスそれぞれが呼応し合って、和音(コード)のように新たな価値の創造がなされるべきなのではないでしょうか。本連載では、デザイン、アート、ビジネスそれぞれの意味や考え方などに関して実例を交えて述べていきたいと思います。

[公開日]

[著] 増村 岳史

[タグ] デザイン思考 事業開発 イノベーション アート

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「デザイン的な思考」と「アート的な思考」とは?

 アート的な思考、デザイン的な思考とは、いったいどのようなものなのでしょうか? 実は私たちは日常的にこれらの思考を切り替えながら使っています。自動車を例に、この2つの思考の違いを解説してみましょう。

電気自動車は“デザイン的な思考”により生まれた

 電気自動車は、ヘンリーフォードが大量生産に成功したガソリンエンジンの自動車を、地球環境や将来の資源の枯渇という課題解決のために、内燃機関をガソリンから電気にしたものです。つまり、過去から存在していたものを、改善や改良した結果として生まれたのが電気自動車で、自動車の機能や役割そのものは変わっていません。

自動車は“アート的な思考”により発明された

 18世紀に発明された蒸気による史上初の自動車は課題解決による思考では決して発明されなかったはずです。

 当時の最も早い移動手段は馬車です。当時の人たちはいかに馬が早く走れるように調教をしたり、牽引する貨車の改善や改良をしていたはずです。馬車の機能を機械が代替することなど多くの人には思いもよらなかったでしょう。イギリスにおいては自動車は馬を驚かせ、道路を痛める“煙たがられる存在”でした。

 その後、ゴットリープ・ダイムラーがガソリンエンジンを発明し、上述したようにヘンリー・フォードが大量生産に成功すると自動車は馬の役割を代替するようになりました。

 電気自動車の例にあるように、デザイン的な思考は「既存の課題」を解決しますので、既にある「1」を「2や3」もしくは「10」にすることに有効です。

 アート的な思考は世の中にない価値を創出しますので、0から1を生み出すといえるでしょう。この0から1を生み出す思考には直観や感性が大きなトリガーになると言えます。

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