インタビュー デザイン・アート・ビジネスのトライアド

ビジネスに不可欠な観察力は、脳をつなげるプロセスで鍛える──言語で思考する「観念化」の弊害とは?

ゲスト:事業構想大学院大学 教授 丸尾 聰(まるお あきら)氏【後編】

 今回はゲストに事業構想大学院大学教授の丸尾聰氏を迎えて、アートとデザイン、ビジネスの関係を深掘りする。前編に続く本稿では、アートとロジックの関係、言語で思考することで起こる「観念化」の弊害、デッサンやスケッチで身につく観察力などの話題をお聞きした。

[公開日]

[語り手] 丸尾 聰 増村 岳史 [取材・構成] 鈴木 陸夫 [画] 青松 基 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] デザイン思考 事業開発 アート思考

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アートとロジックは対立概念ではない

丸尾聰氏(事業構想大学院大学教授 以下敬称略):増村さんの主催する講座の名前が、まさに「アート・アンド・ロジック」というものですね。本来、アートとロジックは対立概念ではないと思うんです。藝大で作品を作ると、「なぜここは赤なのか」「なぜ四角なのか」とすべて理詰めで説明を求められます。「かっこいいから」「流行っているから」などと言おうものなら、途端に怒られる。徹底的に自分の表現した作品の説明を、言語化させられるのです。アーティストやデザイナーになるには、論理的思考力が不可欠だと思いました。

 私は今、事業構想大学院大学で、新規事業の企画力を鍛えるための「クリエイティブ発想法」という授業を担当させてもらっています。その授業ではビジネスパーソンである大学院生に、紙コップやダブルクリップなどの日用品を対象に、ひたすらスケッチをさせながら観察をさせています。スケッチをさせた後は、その対象物の特徴を出来るだけ多く挙げさせる。そうすると、スケッチをしないで観察して特徴を挙げさせた場合と比べて、3〜5倍の特徴が出せるようになるんです。対象物である日用品があまりにも日常的に見るものなので、逆に現物をじっくり観察せずに、脳が反応し、すぐに「紙コップだ」「ダブルクリップだ」と言語化処理をしてしまうんです。

 言語だけで思考や発想をすると、脳の一部しか使わないので発想は膨らみません。言語からいったん離れるための方法が「スケッチを通じた観察」です。まず脳の中の視覚野で認識したものを「スケッチ」として結実させる。そのスケッチを通じた観察は豊かな気づきを次々に呼び起こします。観察で得た特徴について理由を深く思考することで、言語野を先入観に囚われずに動かすことができるんです。

増村岳史氏(アート・アンド・ロジック株式会社 取締役社長、以下敬称略):アートとロジックが両立するわけですね。

丸尾:毎日スケッチブックを持ち歩き、「目の前にある日用品を観察しながらスケッチから特徴出しをする」というワークを一年間続けると、アイデアが湯水のように湧いてくるようになります。何かを観察するたびに、それまで観察して脳に蓄積されたものに触発されて、自然にアイデアが10個も20個も出るようになる。しかも、オリジナリティが高く、可能性のあるアイデアが。この取り組みは年齢や役職や部署に関係なく、すべてのビジネスパーソンにとって有効な発想力の強化方法なのです。今では私の企業研修プログラムの十八番にもなっています。

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