クリエイティブな都市コペンハーゲンが実践する「リーダーシップ」とは
株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer 佐宗邦威氏(以下、敬称略):デンマークでは、伝統的に住民参加型で公共サービスの仕組みをデザインする取り組みが行われてきましたね。ベイソンさんは、公共政策のデザインファーム「Mindlab」の代表としてその動きを現場でリードされてきて、今は活動を国レベルのデンマーク・デザイン・センター(以下、DDC)に移してらっしゃいます。この「地域をデザインすること」のエッセンスについてお聞きできたらと思っています。
デンマーク・デザイン・センター(DDC)CEO クリスチャン・ベイソン氏(以下、敬称略):私たちがDDCで過去取り組んできたのは、たくさんのコラボレーションを生み出すこと、そして私たちの持つデザインのリソースをはっきりさせることです。
具体的にやってきたことは大きく4つです。1つ目は、デンマークの「デザインのDNAの解明」です。ここでのデザインとはもちろん色形だけを指すものではありません。抽象的なものを具体的なものに落とし込んだり、「問題を解決するための思考法」を生み出したりするという意味での、広い意味のデザインです。このようなデンマークのデザインの特徴を2年ほどかけて解明しました。これは、後ほど詳しく説明しますね。
2つ目は、様々な人々との知識の共有と共通理解を促進するために「デザインフォーラム」を立ち上げ、運営しています。デザインスクール、大学、プロモーション機関、様々な産業の業界団体などからきた人々が、1つのテーマのもとに同じ空間に集い、1年ほどかけて定期的に実施するフォーラムです。いつも同じ共同作業をするということではなく、ときにはグループに分かれアウトプットを競うようなワークショップを行いますが、何より同じ空間にいることを重視しています。
早稲田大学大学院(ビジネススクール) 教授 入山章栄氏(以下、敬称略):同じ空間にいるけど、時に競わせる、というのは面白いですね。
ベイソン:そうでしょう! 3つ目は、デザイナーとデザイン機関のネットワーク関係を分析すること(Nordic Innovationのホームページに詳細)です。これは北欧5カ国のデザイン機関のコラボレーションにより行ないました。
この調査では、デンマークにいるデザイナーの人数、専門分野、学位、正規のデザイン教育を受けたか否かなどを調べました。結果わかったのは、デンマークのデザイナーの多くは芸大・美大には通ったことはなく、人文科学、人類学などの出身だということです。
入山:えっ、そうなのですか!?それは驚きです。
ベイソン:芸大・美大は、サービスデザイン、デザイン企画の立案、ビジネスモデルのデザインを教育内容に盛り込むことに後れを取っていますからね。そして、調査対象の多くが、十分な経験を積んだサービスデザイナーだということもわかりました。
そして4つ目が、デザイン賞の創設です。「グローバルサスティナビリティデザイン」と言われる活動に対する賞で、「Index Award」」というものがあります。これは成果や影響度の大きさに対して与える賞で、健康促進、よい都市づくり、地球環境改善など、様々な目的を達成するために、どんなアプローチを利用してもよいという賞なんです。
こういった取り組みを通して、イノベーションを生み出す生態系を作っています。私たちの唯一の役割は、共同・協調を促進するようなリーダーシップを発揮し、参加者を成長させ、参加者同士の繋がりが良好なコミュニティを作ることです。