第三世代CVCの傾向と課題──「キャピタルゲイン」と「シナジー」の“両睨み”を実現するには?

株式会社Groove Ventures戸祭陽介氏、株式会社ゼロワンブースター鈴木規文氏【前編】

 近年、大手企業によるCVC(Corporate Venture Capital:コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドの設立が続いている。CVCとは、本来投資を本業としない事業会社が自社との連携でシナジーを生む可能性のあるスタートアップに対して投資する事業体のことだ。CVCはオープンイノベーションの火付け役となる可能性も高い。どのようなメリットや可能性があるのか、また課題や注意点としてはどのようなものがあるのか。
 本連載では、CVC関連事案を手掛ける株式会社Groove Ventures戸祭陽介氏と株式会社ゼロワンブースター鈴木規文氏がナビゲーターとなり、多くの識者・実践者との対話を通じて、CVCを成功に導く方法を考え、ノウハウやマインドセット、失敗体験の共有することを目的としている。第一回は、前後編にてナビゲーター同士の対談から基本的なCVCの価値や活用について理解を深めていく。本稿は前編。

[公開日]

[語り手] 戸祭 陽介 鈴木 規文 [聞] 栗原 茂(Biz/Zine編集部) [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 長谷川 梓

[タグ] スタートアップ ファイナンス CVC 事業開発 企業戦略 オープンイノベーション

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企業の投資戦略は「シナジーorキャピタルゲイン」×「マイノリティorマジョリティ」の4象限

──まず、それぞれのご経歴やCVCとどのように関われているか、お聞かせください。

株式会社Groove Ventures戸祭陽介氏(以下、敬称略):新卒で大和企業投資(大和証券グループのベンチャーキャピタル)に入社し、営業、審査、投資事業組合運営など一通りのVC業務を経験したあと、あおぞら銀行に出向・転籍し、CVC部門である「あおぞらインベストメント」で経験を積みました。

 その後、事業会社での投資に興味を持ち、ヤフーに入社して多数のM&Aに携わり、社長が井上さんから宮坂さんに交代したのを機にYJキャピタルの企画、設立、運営を担い、2019年の1月まで副社長として在籍していました。大和企業投資で学んだベンチャーキャピタル運営の基礎知識、あおぞら銀行での投資経験、ヤフーでの事業会社としての投資やM&Aの経験など、全てをYJキャピタル設立に注ぎ込んだという感じです。

株式会社ゼロワンブースター 鈴木規文氏(以下、敬称略):私は現在、大手企業とスタートアップの共創によるオープンイノベーションを推進するために、ゼロワンブースターという会社を創業し、コーポレートアクセラレータープログラムや大手企業の事業開発教育プログラムなどを実施しています。

 ゼロワンブースター創業前は、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)で管理部門を統括するコーポレート管理室⻑などを務め、IPOなどの業務に携わりました。その後は、事業創造を専業とするエムアウトにて自身が創業者となり会社を立ち上げて売却するなどを行なっていました。

──では、CVCの詳細をお聞きする前に、企業の投資戦略にはどのような分類があり、その中でのCVCの位置づけなどに関してお聞かせください。

戸祭:おそらくCVCの明確な定義はなく、私見としては「VC(ベンチャーキャピタル)にプラスして、シナジー効果を生み出す機能を事業会社グループ内に持たせたもの」という認識を持っています。

 企業の投資戦略を分類すると、50%超の株式を取得し経営権を握る「マジョリティ投資」と、50%未満の「マイノリティ投資」に分けられます。マジョリティ投資は経営権を握るため、施策に企業側の意向を反映しやすくシナジーを生み出しやすいです。一方、マイノリティ投資は経営権を握らないため、企業側と出資を受けたベンチャー側双方にメリットがないと、シナジーを生み出す施策の合意が得られません。出資した企業側の意向だけでは動かないので、シナジーを生み出すのは、マジョリティ投資より難しいといえます。

 また、企業の投資戦略の分類として、目的が「キャピタルゲイン(保有株式の売買差益)」か「シナジー(相乗効果)」か、という軸もあります。キャピタルゲインに特化するならば、成長性の見込めるスタートアップへの投資に重点を置いた社外向けのマインドで取り組めますが、シナジーを目的とするならば、自社事業の理解度や自社内でのネットワークも重要となり、より社内向きなマインドも必要になります。

 このような分類の軸で考えると、CVCは、マイノリティ投資で、シナジーおよびキャピタルゲインが目的と、位置づけられると思います。

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