再配達問題の解決に向けて取り組みが進む「置き配」と「ドアナカ便」
今、宅配便の再配達が大きな社会課題となっています。国土交通省の「宅配便の再配達削減に向けて」では、宅配便のうち約2割が再配達となっており、年間約9万人のドライバーに相当する労働力が無駄になっているとしています。労働力不足が日本経済全体で課題となる中で、9万人の労働力を無駄にしてしまっているのです。
もちろん、この社会課題の解決に向けてあらゆる企業が既に乗り出しています。宅配ボックスの新設・増設や、配送各社の提供するコンビニ受け取りなど、自宅以外での受け取り方法が広まり始めていますし、配達タイミングの事前通知なども積極的に行われるようになりました。
最近では「置き配」「ドアナカ便」に注目が集まるようになりました。置き配は、あらかじめ指定した場所(玄関前や物置などの室外)に非対面で荷物を届けてくれるサービス、ドアナカ便は、あらかじめ指定したドアのナカ(いわゆる玄関やストックルーム等)に非対面で荷物を届けてくれるサービスです。
なぜこれらが注目されているのでしょうか。
置き配については大企業が大きな動きを見せたことが大きな要因です。楽天は、2016年より楽天ブックスの商品を対象に、都内8区でRakuten-EXPRESSの試験運用を開始しました。Amazonは2019年3月に「置き配指定サービス」をテスト的に実施し、7月には置き配指定サービスの提供エリアを拡大しています。また、配送会社である日本郵便も2019年3月に「指定場所配達」を正式に開始しました。エリア限定ではあるものの、楽天・Amazon・日本郵便と、大企業が「置き配」という新たな受け取り方法を設けたことになります。大企業たちが再配達問題の解決に取り組み始めているのです。
また、ベンチャー企業では、置き配バッグOKIPPAを提供するYperも、2019年4月に量産体制の準備を目的に3.5億円の資金を調達しました。
さらに、経済産業省と国土交通省も「置き配検討会」を2019年3月より4回実施し、置き配実施にあたっての課題等を整理し、関係省庁や関係業界それぞれにおいて取り得る対応策等の検討のために動き始めています。
一方、ドアナカ便に関しては国内ではまだ大手企業がサービスを開始している例はありませんが、米国では既に広まり始めています。Amazonは2017年よりAmazon Prime会員向けに、不在時でも監視カメラを作動させてカギを解錠して宅内配達してくれるサービス「Amazon Key」を開始しました(2019年に名称変更し、現在のサービス名称は「Key by Amazon」)。さらに、2018年からは車のトランクに入れるサービスも始まりました。ウォルマートも顧客の希望によっては顧客の自宅内の冷蔵庫に商品を届けるサービスも提供しています。
米国よりも数年遅れでサービスが広まることの多い日本でも、「置き配」の次に「ドアナカ便」という選択肢が生まれてくると考えています。