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教育業界の破壊的イノベーションも「辺境」から 

『教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する 』

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教育業界における“ユーザー”にとっての「価値」と「ジョブ」

 では、現在大きく成長しているMOOCsが既存の学校を破壊していくのでしょうか?著者らははっきりと言及はしていませんが、私は今のMOOCsはそこまでの破壊力はないと考えています。なぜなら学生の多くにとって、就活やキャリアアップという“ジョブ”のため大学を利用しているためです。ジョブというユーザーが本質的にやりたい事柄に着目すると、単位が得られないMOOCsは従来型の教室の代わりにはならないことが予想されます。大学や大学院に見出している“価値”は、「就職に有利に働くための場」です。つまり職業訓練であり、就職に有利に働くような学位や資格、人脈といった機能を求めるのではないでしょうか。単位もなく、リアルでの人脈も構築できないまま、講義だけをオンラインで提供したところで大きなインパクトはないと考えるべきでしょう。

 すなわち、トップ校はまだまだ両にらみで“イノジレ中(イノベーションのジレンマで悩んでいる最中)”といえると思います。学校に行くことがままならないアフリカの農村部でのオンライン教育や、カーンアカデミーのように、学校を落ちこぼれてしまった子供たちに向けられた教育機会の方が、無料で遠隔地に届ける価値があるのではないでしょうか。

個性を伸ばすとはどういうことか?

 大人数・同時・同空間・同一内容の授業は、教師の数が限られていて、画一的な教育像が必要な時代に生まれました。しかしこれは、提供側の都合です。受け手のジョブに着目することで、IT技術を活用した画期的な教育が実現できるのではないでしょうか。

 これは著者らの提案でもありますが、私の思いでもあります。一人ひとりの未来の担い手に着目して、社会に貢献しながら幸せな社会を同時に創り上げるような投資を先輩たちは行わないといけません。

 日本の教育も「ゆとり教育」の導入で個性を伸ばそうと試みました。過去の事実を記憶し、唯一の正解を子供に求める教育では未来を創ることができないからです。子供だけでなく、人が物事を理解するプロセスや興味は千差万別。国民が標準的に持つべき知識や能力が提供される義務教育について個性を尊重するということは、生徒に応じて一人ひとり授業の内容やカリキュラムを変えることになります。

 今までのゆとり教育が失敗したからといって、授業時間を伸ばし、内容も元に戻したところで生徒の個性を伸ばすことには結びつきません。一人ひとりの生徒に応じた進度、さらに順序や教え方まで変えながら個別に対応できることが理想です。

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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