インタビュー 「大企業による新規事業」のリアル

なぜCCC初のボトムアップ型新規事業は新会社でスタートしたのか──アセット活用と迅速な意思決定の両立

第7回 ゲスト:Creative 1株式会社 山﨑史郎さん、田野倉正規さん、波津美里さん

 前回に続き、大企業で新規事業開発に取り組まれている方へのインタビューを通して、企業内起業のリアルな事例をご紹介していきます。今回お話を伺ったのは、TSUTAYAやTポイントで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)のグループ会社であるCreative 1株式会社の、代表取締役社長の山﨑史郎氏、プロダクトマネージャーの田野倉正規氏、マーケティングディレクターの波津美里氏の3名。CCCグループ会社で初めて行われた社内ベンチャー制度でAIを活用したマッチングサービスを提案し、第一号案件として事業化を進めます。意思決定を加速させるためにCreative 1株式会社を設立し、「D-AI(デアイ)」を2019年10月に開始しました。初のボトムアップ型の新規事業はCCCグループ全社からも注目を受け、今後の活躍にも期待をされる一方で、前例の無い事業創りは前途多難の連続です。今回は新たな取り組みに挑む3名のイノベーターから社内起業の裏側を探っていきます。

[公開日]

[語り手] 山﨑 史郎 田野倉 正規 波津 美里 [聞] 畠山 和也 [取材・構成] 保 美和子 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ 事業開発 企業内起業 大企業

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課題だった「データのBtoC活用」のために生まれたマッチングサービス

畠山:AIを活用したマッチングサービス「D-AI(デアイ)」をリリースされたとのことですが、どのようなサービスなのでしょうか。

山﨑史郎氏(Creative 1株式会社 代表取締役社長、以下敬称略):「D-AI」は、Tカードのデータをもとに衣食住といったライフスタイルや価値観を予測し、モデルデータ(複数の円満夫婦のライフスタイルデータ)を機械学習させることで、2者間の相性を予測するAIによるマッチングサービスです。

畠山:単刀直入にお聞きしますが、数多くのマッチングサービスが世に出ている中、この領域に参入したきっかけを教えてください。

山﨑:3年ほど前にR&Dのような立ち位置で始めたのが発端です。Tカードの会員数が昨年時点で7,000万人を突破しており、大量のビッグデータを保有しています。このビッグデータにおいて様々な活用方法がある中で、「相性予測ができるのではないか?」という仮説のもと、実験的にプロジェクトがスタートしました。

 まず、夫婦だと思われる方にアンケートをとり、そこから導き出されるライフスタイルや志向性のデータを分析します。たとえば、“食”でいうと、健康志向なのか高級志向なのか、という予測です。このような項目の組み合わせをさらに分析したところ、円満度が向上する組み合わせのパターンについて一定の傾向が見えてきました。そこで、これまでにない新しいマッチングサービスへと活用できるのではないかと考えて事業化を模索しました。ちょうどCCCグループ内で社内ベンチャーのコンテストが初めて開催されることとなり、コンテストに応募した結果、事業化が決定しました。

畠山:もともと山﨑さんは新規事業開発を目指されていたのですか?

山﨑:そうですね。私自身、事業創りをやってみたいという思いが強くあって、2014年に広告代理店から転職してきました。CCCであれば、リアル店舗とデータというアセットがあります。これを使って新しい事業に挑戦してみたいと思っていました。CCCとしても、データの新たな活用法を模索していたという背景もあり、この事業を提案しました。

畠山:具体的にどのような課題があったのでしょうか。

山﨑:会員数7,000万人、アライアンス企業も他業種にわたり、さらに取り扱うデータ量も増えてきていることからBtoBのニーズは伸びてきています。一方で、エンドユーザーのメリットが「Tポイントを貯めて、使う」くらいしかありません。そのため、データを活用して付加価値のあるサービスを生み出すBtoCサービスの創出がこの数年の課題となっていました。

畠山:事業化にあたり、株式会社ワントゥーテンさんとの合弁会社としてCreative 1を設立して事業を立ち上げられていますが、そこに何か狙いはあるのですか?

山﨑:デザインやクリエイティビティを高めたかったというものもちろんですが、意思決定を早めたかったのが一番の理由です。良くも悪くもCCCは大きな組織です。新規事業に積極的とはいえ、小さな組織と比べるとスピード感は劣ります。マッチングサービスというレッドオーシャン化しつつある領域に対して、差別化されたメリットを出して勝ち残っていかなければならないので、スピード感は非常に重要です。そこで、信頼できるパートナー企業と手を組んで別会社として事業を動かすようにしました。大企業のリソースを活用しながら身軽に動けるというこの形は、ビジネスプランコンテストの応募の段階で想定していましたね。

creative 1株式会社 代表取締役社長 山﨑史郎氏Creative 1株式会社 代表取締役社長 山﨑史郎氏

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