インタビュー 「大企業による新規事業」のリアル

なぜ凸版印刷の新規事業はONE COMPATHとして切り離したのか──事業創出と拡大の戦略を聞く

第8回 ゲスト:凸版印刷 山岸祥晃さん、ONE COMPATH 早川礼さん

 前回に続き、大企業で新規事業開発に取り組まれている方へのインタビューを通して、企業内起業のリアルな事例をご紹介していきます。今回お話を伺ったのは、凸版印刷株式会社 パーソナルサービス本部長 山岸祥晃氏と、株式会社ONE COMPATHの代表取締役社長 CEO早川礼氏。印刷事業にとどまらず様々な事業を展開してきた凸版印刷は、2019年4月にBtoC領域におけるデジタルメディア事業に特化した新会社ONE COMPATHを立ち上げます。ONE COMPATHは、凸版印刷で20年近く前に生まれた電子チラシサービス「Shufoo!」を、グループ会社で地図検索サービス「Mapion」を運営するマピオンに事業承継する形で生まれました。
 Shufoo!の生みの親である山岸氏は、印刷会社の新規事業としてどのようにShufoo!を立ち上げたのでしょうか。そして、なぜ今ONE COMPATHに事業を移したのでしょうか。その戦略について伺っていきます。

[公開日]

[語り手] 山岸 祥晃 早川 礼 [聞] 畠山 和也 [取材・構成] 保 美和子 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ 事業開発 企業内起業 大企業

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19年前には新規事業として承認されなかった「チラシのデジタル化」

畠山:ONE COMPATHはインターネットの地図サービス「Mapion」を提供していたマピオンと、凸版印刷内の電子チラシサービス「Shufoo!」を運営するチームを統合し、BtoC領域のデジタルメディア事業に特化した会社として設立されたとのことです。その中でも、今回お伺いするShufoo!について教えてください。

早川礼氏(株式会社ONE COMPATH 代表取締役社長CEO、以下敬称略):Shufoo!は、いつでも無料でチラシを見られる電子チラシサービスです。大手スーパーはもちろん、ドラッグストアや家電量販店など、日々の買い物に役立つチラシを掲載しています。現在、約4000企業、11万以上の店舗のチラシを配信しており、月間1100万人以上にご利用いただいています。

畠山:多くの顧客とユーザーに支持されるほどに成長したShufoo!ですが、どのようなきっかけで立ち上げたのでしょうか。

山岸祥晃氏(凸版印刷株式会社 パーソナルサービス本部長、以下敬称略):元々印刷会社である凸版印刷は大量にチラシを印刷していますが、それらは家庭に届けられてから数日しか使われていませんでした。それでもチラシの制作は非常に大変です。2001年当時、私もチラシの営業を担当していましたが、校正などで毎日夜遅くまで働いており、疲労を覚えていました。ちょうどそのころ、一般家庭にも広まり始めたインターネットから着想を受け、「このチラシたちをデジタルにできないか」と考えたことがShufoo!の始まりです。

畠山:印刷が大変なチラシをデジタル化したい、という想いがきっかけということですね。

山岸:まさにその通りです。大阪支社にいた私は、有志と一緒にこれを新規事業としてまとめた資料を持って意気揚々と東京本社に向かいます。そして役員陣の前でプレゼンしたのですが、「君何言ってるの? うちは印刷会社だよ?」と一蹴されてしまいました。

畠山:今では印刷事業をコアにしつつも多様な事業を展開している会社ですが、当時は印刷会社としての色が濃かったのですね。

山岸:そうですね。提案は通らず、社内のプロジェクトとして採用されることもありませんでした。そこでまずは自分でやってみることにしました。実験的に作ってみることにしたのです。営業机の横にフラッドベッドスキャナを購入し、自分でチラシをスキャンし、数種類をつなげてデータ画像を作成していました。

畠山:2001年ということは、インターネットもまだ低速だったのではないでしょうか。

山岸:チラシ1枚をダウンロードするのに5分かかっていました。私自身、これでは誰も使ってくれないと思いながら作業していましたね。それでも「誰かが形にしないと始まらない」という想いがモチベーションとなって継続することができました。

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