本調査は、デロイト グローバルが2011年以降、調達領域における重要な課題やビジネス機会に関するベンチマークとして発信しているもので、経営幹部のメンバー、調達リーダー、ビジネスパートナー、サプライヤー、テクノロジープロバイダーが自身の展望、戦略、パフォーマンスを向上させるための一助となることを目的としている。
調達関連リスク要因の増加
今年度のサーベイでは、調達領域のあらゆる局面で市場の複雑性が高まる中、ビジネスリーダーの6割強が過去12ヶ月間の間に「リスクが増加している」と感じていると回答している(図1)。また、具体的なリスクシナリオについては、「景気低迷」や「貿易戦争」など外部環境に起因するリスクに高い懸念を示している一方、自組織内の課題に起因するリスクを挙げる割合も高く、様々な外部の不確実性に対処するための準備のみならず、リスク管理強化に向け、社内の体制を整える必要性を認識していると言える(図2)。
組織の優先事項
また、今後1年間における組織の優先事項については、ビジネスリーダーの93%が「コスト削減」と「リスク管理」を優先するとして全体のトップに挙げており、次いで「デジタルビジネスモデルの導入/拡大」が87%と高い結果になった(図3)。デジタルビジネスモデルの導入は、「コスト削減」および「リスク管理」いずれの目的にも有効であり、属人的な業務からシフトして業務プロセスを自動化し生産性を向上させる点、また、組織内に蓄積された様々なデータを可視化しリスク管理対応に活用する点において有益だとしている。
デジタルテクノロジー導入に対する不満
「リスク管理」や「デジタルビジネスモデルの導入」に高い優先度が置かれる一方で、それらに対応するテクノロジーを導入した企業の多くは満足していないことも調査で明らかになっている。特に「サプライチェーンのリスク/コンプライアンス」関連のテクノロジーに対する不満度は高く、それ以外のテクノロジーでも半数以上の企業が不満を表しており、重要度の高い施策ながら導入に課題が多いことが読み取れる。(図4)
デジタルテクノロジーの障壁
企業がデジタルテクノロジーの導入に不満を感じている背景には、テクノロジーを活用する上での様々な障壁がある。最も多く挙げられた「データの品質」(57%)の結果から、企業は自社が保有しているデータの活用に苦戦していることがうかがえる。このほかにも、ITリソースや予算の不足、アプリケーション間の統合における障壁などが挙げられ、社内のデジタル環境の整備に課題が見られる。(図5)
調査結果から読み解く調達領域の今後の方向性
今回の調査から、企業の社内外における様々なリスク要因が増加しており、調達の役割が変化しこれまで以上に複雑になっていることが分かった。この不確実性の高い時代において、企業は内部体制の強化が一層問われており、調達領域における価値創出・向上を実現する上でも、部門間の連携強化やビジネスパートナーとのビジネス目標の整合性を図ることの重要性が増してきている。
このように複雑化する環境および課題に対して、解決策を探る最大の手段となるのがデジタルトランスフォーメーションであり、大半のCPOがその重要性の高まりを実感している。ただし、多くの企業が様々な戦略でアプローチしている一方、テクノロジー導入に対する満足度は低く、有効な活用施策や社内外の変革といった課題に対し腐心しているのが現状だという。
デジタルテクノロジーを戦略実現に資する有効施策とするためには、明確なデジタル戦略を策定する必要があり、購買オペレーションの効率化・自動化から、コアとなる調達活動への有用情報抽出まで、幅広い領域でのソリューション検討を進めていくことが鍵となる。また、今後は活用可能なソリューションが多く開発されることも見込まれるため、あふれる情報を適切にコントロールしつつ、内部連携を強化した上で、デジタルトランスフォーメーションへのステップを構想することが重要になると考えられる。
「Global CPO Survey 2019」について
2011年以降、デロイト グローバル(デロイト)によるCPOサーベイは、調達領域への所感に関するグローバルベンチマークとして、調達の未来を形作る重要な課題や機会に関する独自のインサイトを提供している。これらのインサイトは、長年にわたり、経営幹部のメンバー、調達リーダー、ビジネスパートナー、サプライヤー、テクノロジープロバイダーが自身の展望、戦略、パフォーマンスを向上させる一助となってきた。