富山の薬売りの「戦略/優位性」を規定するものとは
富山の薬売りの提供価値は「薬が常にある安心感を提供すること」でした。競合は街中を闊歩する「薬売り行商人」です。当時は店を構える薬屋の数は非常に少なかったことから、主に都市部を中心に薬売り行商人が、にぎやかな恰好と大声で誇大な薬品効能を触れ回ることで人々の注目を集め、薬を売り歩いていました。彼らに対し、富山の薬売りは「地方の一般庶民にとっての購入しやすさ」の点で優位性を構築していきます。
ここで重要なことは「なぜ薬売り行商人は、地方の一般庶民向けの購入しやすさを実現出来ないのか、しないのか」という観点です。当時の行商は地方からの出稼ぎ人員が中心で、総じて薬品自体の知識は浅く、薬の効能を懇切丁寧に伝えることはできません。そのため、定期的に購入してくれる固定客ではなく、一見さんの購入により支えられていました。にぎやかな衣装や目立つ薬箱、大声、真新しい薬品など「いかにして顧客を立ち止ませるか?」ということに特化していたのです。