個人のVCがベンチャー市場を変える

日本VC協会セミナー: インキュベイトファンド 村田祐介氏

資金調達のスケールの拡大、IPO、企業からの買収(M&A)などのイグジットの路線の拡大など、ここ数年でベンチャー市場は活気づいている。一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会が主催したメディアプレゼンテーション(2014年10月22日)で、インキュベイトファンドの代表パートナー村田祐介氏が、日本のベンチャー投資の現状と動向を解説した。

[公開日]

[編] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ ファイナンス 金融

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ベンチャー投資の主役は金融系から独立系へ

VC動向直近のVC動向

はじめに村田氏は独自の調査によるグラフを示した。2013年から2014年直近までの37社のVCのファンドの総額は2581億円。そのうちの1,158億が独立系のVC。以前は、証券会社や銀行などの金融機関の子会社が主流だったが、独立系ベンチャーファンドが台頭してきているのが特長で、社数ベースでは49%が独立系だという。

一方、事業会社として投資をおこなう、コーポレートベンチャーキャピタルの動きも活発になってきている。各事業会社が、自社のビジネスのシナジー生むための戦略としておこなっているものが多かったが、最近ではこうした事業会社の投資も、個人のパートナーの方の信頼関係の中で、成り立ってきているという。

これまで、コーポレート・ベンチャーキャピタルは親会社にとってのベネフィットが出来れば、ファンドとしては損をしても良いというスタンスの会社が多かったのですが、最近はそうではなくて、ファンドとしてのパフォーマンスもしっかり追求されています。独立系、コーポレート、パートナー型などのどの分野でも、個人としてのベンチャーキャピタリストの方が増えてきたという印象を持っています。

米国の場合、とくにシリコンバレーでは個人がファンドの担い手(GP)となって、ファンドの出資者(LPS)から資金を預かり投資をするという形が一般的だ。 日本の場合、会社内のベンチャーキャピタリストは組織の中のサラリーマンであり、ベンチャーとの関係を築いても、人事異動や会社の命令で変わってしまうということが起きていた。それが個々数年で、変わってきたのだという。

コーポレートキャピタルとキーマン

ここに記載したような企業の中の具体的な個人が、ベンチャーとの関係を築いています。日本でもようやくシリコンバレー型になってきたといえます。今までのサラリーマン型のファンドだと、リスクをとってやっているベンチャー側にとっては信頼関係が構築しづらいという状況があったのですが、変わってきたと思います。本来、この形がグローバルスタンダードなのです。

調達スケールは格段に上がったが、まだまだこれから。

10億以上の調達ベンチャー10億以上の調達ベンチャー

個々数年で、累計で10億円以上の資金調達を実施した会社が24社。累計調達3億円以上の会社が50社にのぼる。ようやく、シリコンバレーの“平均”ぐらいと肩を並べるぐらいになったという。

シリコンバレーのメガベンチャーは未上場段階で1000億を超える時価総額になるメガベンチャーという会社はざっくり150社以上、1社だけで2000~3000億を調達する会社があるのに比べればまだ規模は小さいと言えます。 こういう資金調達の背景としては、資金調達や資本政策のリテラシーがかなり成長してきたことがあげられます。シリアルアントレプレナーが増えてきたことも大きな要因です。最近では、3億の調達はそんなに大きくないという印象ですが、3年前だと3億といえば大型と言われたので隔世の感があります。ではこれがバブルかと言われるとまだまだそうではなくて、これからだと思います。

買収によるイグジット企業

次に村田氏は、ここ3年で買収によるイグジット会社をあげた。ネクソンが買収したgloops、グリーに買収されたポケラボなど。最近ではKDDIが買収したnanapiなどが記憶に新しい。

M&AによるExitM&AによるExit

個人的には、ようやくまともなM&Aが増えてきたという印象を持っています。最近ではM&Aを実行した後、被買収企業のトップマネジメントが買収企業の経営層になるケースも増えてきました。 人材を獲得するためにスタートアップの経営者を内部に引き入れることでイノベーションを実行するというシリコンバレーのような動きが、日本でも現れてきたといえます。たとえばヤフージャパンの執行役員の方たちの多くは、自分の会社を売却してそのまま役員として活躍されています。直近では、ミクシィもそんな形になっていて執行役員の方々は、この3年ぐらいに買収された会社のトップマネジメントの方々です。

シリコンバレーには未だ遠いがエコシステムが回りはじめた

ベンチャーのエコシステム

IPOなどによってイグジットした起業家が、シリアルアントレプレナーとして再起業したり、買収によりイグジットした起業家が、出資をするというパターンも現れてきている。起業家と投資家によるエコシステムが回りはじめたと村田氏は言う。

シードマネーが投下され、突破した起業家の資金が次のスタートアップに回るというエコシステムがうまく稼働してきて、厚みが少しづつでてきました。プレイヤーの質も向上し、良質なスタートアップに還元されてきています。会社として事業を開始する段階での本格的な資金調達としてのシリーズA、その後の段階のシリーズBなどのいくつかの移行を経て、それぞれのラウンドごとに投資家も棲み分けられます。 その上で、M&AやIPOによるイグジットを経験した人が、さらにシリアルアントレプレナーとして起業するというサイクルが出来てきました。事業家と投資家の距離感もだいぶ近くなり、今後もこの関係の中で、大きな資金調達やIPOやM&Aが活性化していくのではないかと考えております。

日本のベンチャー投資環境は変わってきている。今後シリコンバレーのような、1000億を超えるようなスタートアップが出来る可能性も近づいてくるだろう。そうした環境に向けての、質的・量的な変化が起きているのだと村田氏は締めくくった。

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