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経営戦略としての知財

知財部不在のM&Aの問題点──「コーポレートガバナンス・コード」と「IPランドスケープ」の意外な関係

第3回

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 前回は、「IPランドスケープ」とは何かというテーマで、(1)IPランドスケープは知財のDX(デジタル・トランスフォーメーション)である点、(2)IPランドスケープで主に実現できることを、「1.新規事業の分析と提案」「2.M&A候補企業・アライアンス先候補企業の分析と提案」「3.経営分析」と3つに大別したうえで、「1.新規事業の分析と提案」について解説した。  そこで今回は残りの2つ、「2.M&A候補企業・アライアンス先候補企業の分析と提案」と「3.経営分析」について解説し、それらを統合してIPランドスケープの「定義」を述べる。そして、上場企業であれば意識することが不可避な「コーポレートガバナンス・コード」と「IPランドスケープ」の“意外な”関係について付言したい。

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IPランドスケープを「M&A候補企業・アライアンス先候補企業の分析と提案」に活用する

「M&Aあるいはアライアンスを『IPランドスケープ』なしに進めることはできない」

 日本経済新聞が「IPランドスケープ」に注目して最初に取り上げたのは2017年7月17日の朝刊であったが、その記事*1はM&Aを知財部が主導した事例の紹介から始まっていた。

 具体的には、自動ドア等でグローバルなトップクラスの強みを持つナブテスコ(Nabtesco)が、2017年3月にドイツの自動車部品メーカーを買収した背景に関して。その記事では、知財部の主導があり、IPランドスケープという買収の裏付けとなる「エビデンス」があったことが報じられていた。

 今から10年近くも前のことになるが、ある某大手メーカーで社内講演を依頼され、その後の懇親会で知財部長から雑談中に聞いた話が、今でも印象に残っている。

「いやぁ、先日びっくりしたことがありました。うちの会社がA社を買収した、という記事を新聞で知りまして……」

 驚いたのは、むしろ私である。

 一口にM&Aといっても目的は様々だ。それが既存事業あるいは新規事業のいずれのためであっても、メーカー同士、最近ではメーカーとIT企業あるいはテックベンチャーの場合、通常は「技術の獲得」という目的でM&Aが行われる。欧米企業を中心にここ10年の間に増えているのが、「技術」を形式知かつ移転可能な形に財産化したといえる「特許権」を獲得することを主目的としたM&Aである。

例えば、2011年にグーグル(現・アルファベット)による携帯端末会社のモトローラ・モビリティの買収では、「アンドロイド」を守るための多数の特許権を獲得するのが主目的だった、というのは有名な話である。

 さらに、1+1=2ではM&Aの旨味はほとんどないため、ほぼすべてのM&Aにおいて、1+1=3以上のいわゆる「シナジー(相乗効果)」が期待されている。このうちメーカーやテックベンチャーが絡む場合であれば、ライバル企業を見据えた「技術の強みの強化あるいは弱みの補完」という形のシナジーを期待するのが通常であろう。

*1.日経新聞社(2017/7/17付日本経済新聞 朝刊) / 知財分析を経営の中枢に 「IPランドスケープ」注目集まる M&A戦略に生かす

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杉光 一成(スギミツ カズナリ)

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