連載・コラム 新しい金融のカタチ

顧客接点の変化が生み出した“3つの階層”と、それがもたらす金融業界の産業構造の転換

第3回

 前回は、“体験”による価値提供が重要になったことによって登場しはじめた、金融サービスの新たなプレーヤーについてご紹介しました。今回は、顧客接点が“点”から“線”へと変化したことによって生まれた3つの階層構造について解説していきます。

[公開日]

[著] 伊藤 祐一郎

[タグ] 金融 事業開発 テクノロジー FinTech DX

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顧客接点の変化によって生まれた階層構造型のエコシステム

 インターネットやモバイルアプリの発展により、人々が常にオンラインでつながっている状況になりました。また、オフラインといわれていたリアルチャネルでも常時インターネットと接続し、あらゆるものがデジタル上でやりとりされるようになっています。その結果、顧客との接点は、店舗での単発的な“点”の付き合いからデジタル上での継続的な“線”の付き合いへと変化しました。

 この顧客との接点の変化は、事業者に

  • プラットフォーマー
  • サービサー
  • メーカー

という階層構造を生み出します。

 デジタル上で継続的な接点を持つプレーヤーにはありとあらゆる情報が蓄積されています。膨大な顧客情報を持つプレーヤーは「プラットフォーマー」と呼ばれ、非常に大きな力を持つようになりました。

 プラットフォーマーの持つ力の源泉は、“顧客接点”と“コンテクスト”における高い優位性にあります。継続的な“顧客接点”を持っているということは、可処分時間のシェアが高く、ユーザーが高頻度でそのサービスに触れることを意味します。その結果として、ユーザーの属性情報と行動情報が蓄積され、ユーザー行動の文脈、すなわち“コンテクスト”を理解することが可能になります。この顧客接点とコンテクストを活かし、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーションで提供することで、プラットフォーマーは圧倒的なユーザー体験を提供できるようになります。優れたユーザー体験は、顧客接点をさらに強固なものにします。顧客との接点を持ち続け、顧客を深く理解することで生み出される差別化は、「顧客のことを知っているプレーヤーほど強い」という構造になっているのです。

 既に、プラットフォーマーを目指すプレーヤーたちの間で、ユーザーの可処分時間を奪い合う戦いが始まっています。少しでも自社のアプリ上で時間を過ごしてもらうため、各社は機能拡充を進めていますが、全ての機能やサービスを自社で開発・運営していてはスピードと種類において限界があります。そこで出てくるのが、プラットフォーマーと連携して機能やサービスをだけを提供する「サービサー」という役割を担うプレーヤーです。

 強力なプラットフォーマーを押しのけてユーザーとの接点を獲得することは非常に難しく、また、顧客獲得費用も高騰しています。そのため、サービサーは自社独力でやるのではなく、プラットフォーマーのパートナーとして経済圏に入ることで顧客獲得する方が理に適っています。

 プラットフォーマーが力を持ち、サービサーがプラットフォーマーと連携して拡大する一方、旧来型産業の中心であったモノや機能を作っていた「メーカー」は、サービサーのさらに下に位置づけられるようになっています。メーカーは顧客接点を持つことが難しくなっており、差別化が一層困難になっていっているのが現状です。

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