「失われた30年」でも国内のスタートアップ環境は着実に前進している
「日本からGAFAを生み出すには、『上場後』の成長戦略を考えよ」というテーマで連載を開始するにあたり、今回は、日本国内のスタートアップ環境の現状、そして、上場後にベンチャー企業がぶつかる壁、成長を阻害する要因についてお話ししたいと思います。
まず、日本経済全体を眺めると、日経平均株価が30年半ぶりに一時3万円を突破したとはいえ、失われた20年、30年という言葉があるように、GDPの低成長が続き、最新の世界時価総額ランキングでは、GAFAを中心としたアメリカ企業が上位を占める一方、50位以内の日本企業は40位台のトヨタ自動車のみといった状況が続いています。
しかし、日本のスタートアップが置かれている環境は2021年現在、今までにないくらい「良い状態」にあります。
その要因の1つとして挙げられるのが、経産省を中心としたベンチャー、ユニコーン育成支援策。1999年のマザーズ市場の開設を筆頭に、起業家支援資金制度の拡充、人材ネットワークの構築支援、税制優遇など、さまざまな施策が打ち出されています。
またVCをはじめとする、スタートアップへの資金供給も飛躍的に増加し、2020年の未上場スタートアップの資金調達額は、2011年と比較し5倍以上となり、この10年で大幅に増加しました。
さらに、それらのスタートアップのステップアップ先であるマザーズ市場への新規上場企業数もこの10年で大きく増加し、また日本経済新聞が昨年末まとめたデータ[1]によると、起業から上場までの期間も、2000年の平均23年に対して、2020年には平均17年と、実に6年間も短縮され、スタートアップの成長が加速していることがわかります。
[1]:「新規上場6年若返り 00年比、設立から平均17年」(日経経済新聞、2020.12.18)