“おもてなし”の国日本は顧客満足の期待値ハードルが高い
──先ほど日本にはおもてなしの文化があるとおっしゃいましたが、それだけではカスタマーサクセスとはいえないのでしょうか。
森田:カスタマーサクセスと非常に近い概念にCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)があります。江戸時代の大福帳など、顧客管理の手法は日本に古くから存在します。顧客との関係をより良いものにして継続的なお付き合いをするという農耕民族的発想は、刈り取り型・狩猟的発想よりも日本にフィットしているはずなのです。
ただ、日本の顧客は、おもてなしに対する期待値が非常に高いんですね。日本で求められる「顧客満足」は、欧米諸国でいう「顧客感動」のレベルだといわれています。だから本気でカスタマーサクセスに取り組むには、ハードルは高いのだと思います。しかし考え方を変えると、日本でカスタマーサクセスを成功させることができれば、欧米でも熱狂的に支持されるだろうということでもあります。カスタマーサクセスの概念を経営に浸透させることができれば、世界で戦う上で強力な武器となり得るのです。
奥村:先ほどカスタマーサクセスの認知率は3.5%だとお伝えしましたが、実は意識せずにカスタマーサクセスに繋がることをやっている企業はたくさんあると思っています。たとえば、今までは洗濯機を買ってもそこで個人情報を登録することはありませんでしたが、今ではリモートで洗濯機を動かすために情報を登録します。それによって、企業は使用回数などのデータを貯めているんですよね。保険会社や製薬会社などでも、アプリを開発して顧客との接点を増やし、データを集めています。データを活用して顧客起点のビジネスに変革していくこともカスタマーサクセスだといえます。