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『起業の科学』『起業大全』の田所雅之氏が予言するClubhouseの未来

 1月23日の日本での運用開始からユーザー数を爆発的に増やすも、熱狂から一転、粗悪なroomの乱立やセキュリティの問題など、負の要因が囁かれ始め、幻滅期の様相を呈しているClubhouse。偶然の流行で終わるのか、それともInstagramやTikTokのような新しい標準となるのか。
 衰退と生き残りのシナリオ、予想される収益化の形、FacebookやTwitterなどとの競争、巨額買収の可能性などを、世界のビジネスモデルに精通し、自らもClubhouseに頻繁に登壇する『起業の科学』『起業大全』の著者である田所雅之氏に伺います。

[公開日]

[語り手] 田所 雅之 [取材・構成] 高橋 龍征 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

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Clubhouseがプラットフォームとしての地位を確立するには

──Clubhouseではユーザー急増による弊害が目立ち始めています。初期の魅力を牽引した有名人による失望のコメントや、セキュリティなど危険性を訴える記事も出てきました。

 確かに、1月下旬をピークにTwitterでのメンション数は下落していますが、これは予想できた流れです。

 招待者が限られ、芸能人や有名起業家などしかいないような段階では、初期ユーザーにとっては刺激的かつ心地の良い状態だったでしょう。しかし、熱はじきに冷めますし、有名人と一方的に知り合いたいだけの層が続々と入り、初期ユーザー達の“心地良い内輪話”を外に漏らすような人が出てくれば、初期の魅力の源泉であった有名人達は徐々に去っていくでしょう。

 芸能人や経営者といっても、話のプロではありません。喋りを生業とする芸人ですら、持ちネタはすぐに尽きます。YouTubeとは異なり、収益化の目処が立たない場で露出を続けることへの疑問も生じます。

──Clubhouseはこのまま廃れるのでしょうか。

 スマートフォンの登場により、WhatsAppやLINEなどのメッセンジャーアプリが、スマートフォンのカメラの解像度向上により、Instagramのような画像共有SNSが成立しました。

 音声SNSは、「AirPods」という新しいデバイスが普及して生まれた、“ながら聞き”というニーズを満たすプラットフォームです。一時的流行ではなく、恒常的な行動様式の変更なので、音声SNSそのものは廃れないでしょう。

 Clubhouseが世に出てからまだ10ヵ月です。急拡大に対する副作用は起きていますが、本格的な戦いはこれからでしょう。

──Clubhouseが「幻滅期」を超えてプラットフォームとしての地位を確立するシナリオを教えてください。

 Clubhouseの本質はUGC(User-generated-content、ユーザー生成コンテンツ)です。直接気軽なコミュニケーションを取れるこのプラットフォームに合ったコンテンツが増えれば、より価値が上がるでしょう。新しい可能性を感じさせる使い方も次々と出始めています。たとえば、サイバーエージェントが採用を意図したイベントをClubhouseで実施していました。そのようにClubhouseに合うコンテンツやフォーマットが次々見出され、合わないものは自然淘汰されていくと思います。

 また、テレビで活躍するタレントと人気ユーチューバーが同じスキルを身につけているわけではないように、Clubhouseにも、そこで活躍する人に求められる資質があります。たとえば、IT批評家として活躍する尾原和啓氏のような、異質な分野の人々の掛け合わせを即興ででき、それを知的喜びにしている「インプロバイザー(即興役者)」がそれにあたります。ありえない組み合わせが普通に起きるClubhouseならではの状況を、価値あるコンテンツに転化するのに欠かせない資質です。

 もう1つ、「偏愛」もClubhouseに求められる資質です。Clubhouseにはマニアックなテーマのroomがあります。私がつい引き寄せられたのが「ドラクエⅣについて語り合う」というroomです。そこでは、「編成するチームで、各プレーヤーの最初の職業をどういう組み合わせにするか」だけで30分間熱く議論していましたが、ドラクエ世代の私にはいつまでもいられるくらいおもしろいものでした。ちなみにそんなニッチなネタを熱く語っていたのが人事領域で有名な方だという点も、他のプラットフォームにはないおもしろいところです。

 こうした、プラットフォームの特質に合ったロングテールのコンテンツが多様かつ多量に生まれ、賑わいを保ちながらユーザー層を広げ、DAU(Daily Active User)が100万人を超えてくると、プラットフォームとしての地位確立に向けて、次のステージに進むことになります。

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