難産多死の新規事業、待ったなしの既存事業DX
ここ数年の間に、大企業内で行われる新規事業のアクセラレータープログラムはほぼ整備されてきました。
社員から広くビジネスアイデアを募集して、1次審査を実施。審査通過チームに対しては社内の有識者や外部の専門家をメンターにつけてブラッシュアップ期間を設ける。さらに次の審査を通過したビジネスアイデアに対してはある程度の金額の予算を付与してビジネス検証を行い、いくつかの審査ステップを潜り抜けて見事最終審査を通過したアイデアは、事業化(または別会社化)が約束されるという形が多く見られます。
しかし、せっかく導入したアクセラレータープログラムですが、運用フェーズに入り、多くの企業が同様の課題に直面しています。
(1)最終審査まで残る案件が少ない
それなりの数のエントリーが集まっても、ビジネスアイデアの仕上がり状態が甘く、各審査ステップで通過できる案件がみるみる減っていき、最終審査まで漕ぎつける案件数がほとんどなくなってしまうという状況が発生しています。
外部のプロによる伴走をつける件数を増やすなどの対策を実施しますが、数年経つと、社員のアイデアのネタも枯れてきて、徐々にエントリー数は減っていく傾向にあるので、毎年、最終審査通過案件が数えるほどしかないという状況からは抜け出せません。
そこで、苦肉の策として、想定顧客と顧客課題のみの提案でエントリー可能とするなど、初回のハードルを下げることでエントリーの数を増やします。しかし、結局は途中で審査落ちする案件が増えるだけで、最終審査まで生き残る案件数には変化が起きません。
(2)最終審査を通過した案件のその後が奮わない
何とか最終審査を通過したいくつかの案件は事業化されたり別会社化されたりしますが、その後の明るい話題は乏しく、新規事業の取り組み自体が経営層から厳しい目で見られはじめます。もちろん新規事業が収益を生み出すには時間がかかることは理解しているものの、そもそものビジネス規模が数億程度の売上見込みのものが多く、本業の収益と比べた時には心許ないのが現状です。
(3)待ったなしの既存事業DX
新規事業がそうこうしているうちに、既存事業でのDXのほうが急務になり、本業においてもビジネスの再デザインが必要になっています。
こちらは、既存領域を知り尽くしたうえでUX(顧客体験)を中心に、既存ビジネスを再構築できるスーパーパーソンのビジネスデザイン力に頼らざるを得ない傾向にあります。しかし、そんな人物はなかなか見当たらず、結局は、あまりにも複雑に絡み合った既存事業の仕組みの前に、事業の一部分のIT化を行う程度に矮小化されたDXプログラムが進むことになります。