ビジネスモデル以前に必要な個人の“頭と足腰”の基礎力
インターネットの発達により、ビジネスモデルの変革は著しいものになった。そもそも昔からビジネスモデルという概念はあったものの、学術系、非学術系においても言葉として頻繁に使われるようになったのは1990年代以降である。つまりインターネットの発達により、イノベーションが次々と起こり、それに付随してビジネスモデルも変化、創造されてきたのである。
さまざまなビジネスモデルが創造されたことで、多くのことができるようになった。収益モデルひとつを見ても、替え刃方式だけではなく、広告や、フリーミアムなどの選択肢がある。儲け方、作り方、コストのかけ方などの各領域で選択肢が広がり、多くの組み合わせもできるようになったといえるだろう。しかし、逆に選択肢が広がったからこそ、考えなければならないことも増えている。
イノベーション時代の経営は『自由度との戦い』です。ビジネスモデルの自由度がどんどん上がっていますが、それに頭とか足腰が付いていっていないということです。
こう語るのはK.I.T.虎ノ門大学院主任教授であり『ビジネスモデル全史』の著者である三谷宏治氏だ。三谷氏は、この自由度の戦いの中では、「突破力のある個の力」が必要不可欠と語る。では必要とされる個の力とは具体的になんだろうか? 三谷氏は3つの力をあげた。一つ一つ紹介していこう。
「知っていること」の弊害とは何か?
三谷氏はイノベーション時代の個人に必要な力として、まずは常識から抜け出すための考える力、すなわち「発想力」が必要だという。ビジネスモデルの歴史においても、革新的ビジネスモデルと言われるものは、それまでの「常識」を覆してきたものが多い。しかし、「発想力」には、私たちが現在知っている知識が弊害になると三谷氏は語った。
「知識が身を滅ぼす」という文脈で三谷氏がもう一つ主張するのは、「座って悩むな、動いて考えろ」だ。
日本人は、考えることと座って悩むことをほぼ同一視しています。でもそれは“思考の停止”です。そのことに気がつけば勝ちです。まず動いてみよう!と思考の停止から逃れられます。