イノベーション・マネジメント・システムへの誤解
イベント冒頭、Japan Innovation Network(JIN)代表理事の紺野登氏が、IMS(イノベーション・マネジメント・システム)やISO56000シリーズにある誤解、産業界への影響を語った。
紺野氏は、イノベーションの本質は「新しい価値の創造とその実現」であり、単なるアイデアに留まらず持続的に成果を生むことが必要だとした。さらに、同氏は日本企業がイノベーション推進で抱える課題として、属人的で短期的な活動の限界やトップ交代での断絶、専門家不足、長期視点での構想の欠如などを指摘した。
また、「古い組織やシステムに新技術を追加するだけでは、非効率な上にコストがかかる体制にしかならない」と指摘し、新しい経営OS(オペレーティングシステム)の上で新しい技術やデザイン思考などの手法をアプリケーションとして動かすといった「体系的な経営レベルでのアプローチ」が求められていると話す(図)。これはDX実現のためにも通ずる視点である。
そうした経営システムの更新という需要に答えるべくIMSとその国際規格であるISO56001が結実したといえる。
とはいえ、IMSの導入は必ずしも一筋縄ではいかない。重要なのは個々の企業の文脈に合わせ、既存プロセスや文化とIMSを統合しつつ刷新することだ。そのため、トップが明確なビジョンを持って変革を推進することが不可欠だと同氏は強調する。そこではじめて、IMSによって孵化(ふか)期間からスケール化までのイノベーション経営を実践できるようになる(図:イノベーション・マネジメント・システムの役割)。
IMSは、グローバルに通用する共通基準、そして共通言語として、大企業の組織変革を支える役割を今後担っていくに違いない。そのためにも、JINは国内外組織との連携でISO56000シリーズの普及活動を進め、各組織に適したカスタマイズをした事例を増やしていく予定だと語り、同氏は講演を締めくくった。