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「企業間取引」と「決済」の融合がもたらす新たなエコシステムとは?

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 一般社団法人Fintech協会では、デジタル庁が定める重要な政策項目の1つである「企業間取引のデジタル化推進」に注目している。取引のデジタル化が進むことで「企業間取引における選択の自由」や「決済手段における選択の自由」が広がり、企業間や官公需においてもフィンテック企業の活躍が見込まれる。 12月3日開催のFINTECH JAPAN 2021では「企業間取引と決済の融合がもたらすエコシステム」と題して、企業間取引と決済に係る課題や各社の取り組み、海外事例を交えて、現在想定しうる新規ビジネスのシーズについて議論が行われた。登壇者は同協会代表理事副会長/freee株式会社 執行役員社会インフラ企画部長 木村康宏氏、同協会代表理事/株式会社インフキュリオン 代表取締役 丸山弘毅氏、キャディ株式会社 装置事業部長 幸松大喜氏。モデレーターをデジタル庁国民向けサービスグループ兼IPA DADCプロダクトマネージャ 大久保光伸氏が務めた。

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大久保氏が語る、次世代取引基盤の目指す姿

 最初に大久保氏は、「取引先の選択の自由」「決済選択の自由」という観点から、次世代取引基盤の目指す姿を紹介した。

 「取引先の選択の自由」とは、SaaS、PKG(パッケージ)、ExcelやPDFベースでのやり取りを表し、「決済の選択の自由」は、銀行決済、資金決済法に基づいた電子マネー、クレジットカードなどの決済手段を表すものだ。

 標準化すべき項目として、銀行APIを筆頭にeKYC(electronic Know Your Customer、本人確認手続き)が重要になり、それによって法人でも“ウォレット”という概念が適用できるのではないかと大久保氏は説明する。

 一方で、ネットワークに関しては、今後標準化される「Peppol(ペポル、電子文書の国際規格)」、既に整備されているが利活用が課題の「ZEDI(全銀EDIシステム)」などで、最も重要になるのはIDだ。「GビズID」を始めとして様々なIDが存在するが、システム的に1つのIDに集約していくことが重要だという。ただし、ここでもKYCの概念が欠かせない。

 これらすべてが整うことで、デジタル最適化のモデルケースが完成する。つまり、既に一部のSaaS企業が提供しているような受発注から請求、決済までの一気通貫の取引を、業界全体で取り組んでいくべきだというのだ。

 この構想の最終的な効果としては、商流と金流のデータの融合による価値の創出や、新しい取引先の開拓が挙げられる。また、デジタルによる業務最適化を通してサプライチェーンの最適化が見込まれ、人材の流動性や標準化も可能になる。さらに、ID(適格請求書発行事業者番号)がSWIFT(国際送金の送金システム)にも対応し、国際取引にも準拠できるという。

デジタル庁 国民向けサービスグループ 兼 IPA DADC プロジェクトマネージャ 大久保光伸氏
デジタル庁 国民向けサービスグループ 兼 IPA DADC プロジェクトマネージャ 大久保光伸氏

 このようなビジョンの実現に向けて、多くの法改正が実施されている。たとえば、銀行法の改正によって銀行のAPI提供の努力義務が課せられ、現在100行以上の金融機関が対応している。また、2018年6月に施行された改正銀行法で、新たな業種「電子決済等代行業(以下、電代業)」が新設され、2020年6月には1つのライセンスで「銀行・証券・保険」すべての分野の金融サービスをワンストップで仲介可能とする新たな業種・金融サービス仲介業が定められた。

 そして、2023年10月から導入される「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」を見据え、電子インボイス・システムの構築に向けて国際標準規格「Peppol」をベースとした電子インボイスの日本標準仕様の策定についても同様だ。

 これら政策の推進にはFintech協会も働きかけを行ってきた。既存の法律や行政機関の状況に依存せず、業界を横断してあるべき姿に向けた動き出しのきっかけ作りを手伝っていくことが協会の役割だと丸山氏は話す。

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この記事の著者

比惠島 由理子(ヒエジマ ユリコ)

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