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『シリアル・イノベーター』著者が語るブレイクスルーイノベーションの流儀

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 世間に名を知られた起業家でなくとも、企業に社員として属しながら次々とイノベーションを起こす人材「シリアル・イノベーター」は確実に存在する。そんな人材についての研究をまとめた『シリアル・イノベーター:非シリコンバレー型イノベーションの流儀』(プレジデント社)の3名の共著者のうち、イリノイ大学よりレイモンド・L・プライス教授、ブルース・A・ボジャック教授が来日、株式会社リ・パブリックが主催、東京大学i.schoolが協力する形で講演会が行われた。本レポートでは講演およびその後の編集部インタビューの一部をお伝えする。

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ブレイクスルーイノベーションなしでは生き残れない

 プライス氏とボジャック氏が注目したのは、組織内でイノベーションを繰り返し起こせる人材、シリアル・イノベーターだ。ここでのイノベーションとは、既存製品の性能を向上・変化させていく段階的イノベーションではなく、新しい市場を切り拓く「ブレイクスルーイノベーション」を指す。ボジャック氏は、段階的イノベーションに優れた大企業は多いと指摘しつつ、ブレイクスルーイノベーションの重要性を次のように強調した。

ブレイクスルーイノベーションは、現状を混乱させたり阻害したりするので、企業はなかなか受け入れられない。また、段階的なノベーションで成功を収めている間は、ブレイクスルーイノベーションの重要性を見過ごしやすい傾向もあります。しかし、創業後の数年間は段階的イノベーションだけでやっていけたとしても、ある日突然、他社のブレイクスルーイノベーションにつぶされてしまうといったことはあります。だからこそ、企業の存続にはブレイクスルーイノベーションが欠かせないのです。
(ボジャック氏)

ブルース・A・ボジャックブルース・A・ボジャック(Bruce A. Vojak)氏
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校工学部副学部長・非常勤教授。イリノイ大学工学部にて学生の指導に従事。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)において経営戦略、科学者人材育成プログラムに関するコンサルティングも手がける。

シリアル・イノベーターは稀有な人材

 両氏が手がけたシリアル・イノベーターの学術研究は、異業種の多数の企業を対象に、50名超のシリアル・イノベーターのほか、同僚やマネージャーへのインタビューに加え、アンケートを実施した。数年にわたる研究を通じて、シリアル・イノベーターの人間性、イノベーションへの動機やその起こし方、人事的に彼らをどう扱うべきかなどについての知見が次第に蓄積されてきた。

 同研究が実施したアンケートから、シリアル・イノベーターの特性を有する人材は、組織の規模などにもよるが、ほぼ300人中1人という非常に稀有な存在であると試算されている。もちろん、彼らがブレイクスルーイノベーションを推し進め、画期的な製品やサービスを市場に出すまでには多くの協力者が関わる。ボジャック氏は、オペラにたとえれば、シリアル・イノベーターは指揮者かソリストを務めるスター歌手のような存在で、同僚たちはその他の共演者や裏方にあたるという。

シリアル・イノベーターは特殊な能力を持つ少数の個人ですが、彼らのスキルや特性、組織の導き方、ものの見方を知ることは、自分自身がイノベーターではない人々にとっても、彼らと関わり合いながら組織内で物事をどう進めるかについての示唆を得られると考えています。
(ボジャック氏)

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