東京大学エコノミックコンサルティング(以下、UTEcon)は、米連邦準備理事会(以下、FRB)が政策分析で多用する「FRB/USモデル」というマクロモデルの公開バージョンを活用し米国主要マクロ経済変数を予測する新サービス「SEPアップデート」の提供を開始した。
FRBは、連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee)メンバーによる先行き3年間の主要マクロ経済変数の予測値を「Summary of Economic Projections(SEP)」として、四半期に1度の頻度で公表している。SEPは今後の米国の金融政策を占う上で重要な判断材料であり、金融市場参加者から大きな注目を集めているのだという。
SEPで公表されるのは、GDP成長率・失業率・インフレ率・コアインフレ率・FF金利の5変数についてのみ。また、暦年ベースの予測値とそれらの長期的水準の想定値のみしか提示されない。しかしながら、金融市場参加者は上記5変数以外のマクロ経済変数の予測値、そして各変数の四半期毎の変動やSEPの予測期間以降の動きについても、強い関心を持っていると考えられるとした。
「SEPアップデート」は、こうした市場参加者の関心に応えるべく、FRBが政策分析で多用するFRB/USモデルというマクロモデルの公開バージョンを用い、様々なマクロ経済変数について、SEPと整合的な予測パスを提供。「SEPアップデート」は下記の特徴を備えている。
1:金融政策分析のエキスパートが作成
SEPアップデートは、金融政策分析において国際的かつ専門的な知見を有するエキスパートが執筆。
UTEcon技術アドバイザー / 東京大学大学院経済学研究科及び公共政策大学院准教授 仲田泰祐氏
マクロ経済モデル、時系列モデルを使っての様々な研究・経済分析経験を有する。前職の米国連邦準備制度理事会では、ゼロ金利下での金融政策に関する分析、マクロ経済モデルの開発に従事。最先端の理論・実証研究を実務に生かすことを得意とする。シカゴ大学B.A.(経済学)、ニューヨーク大学Ph.D.(経済学)
UTEconアドバイザー / 慶應義塾大学経済学部教授 廣瀬康生氏
マクロ経済モデルを用いた実証分析を専門とする。前職の日本銀行では、調査統計局・国際局・企画局において、マクロ経済モデルの開発や、それらを用いた経済予測および金融政策分析に従事。政策当局・研究機関・国際機関・海外中央銀行に対して、マクロ経済モデルの導入と活用に関するコンサルティング経験を有する。慶應義塾大学B.A.(総合政策)、ジョンズ・ホプキンス大学Ph.D.(経済学)。
2:主要マクロ経済変数をカバー
FRBがSEPで公表するのは、GDP成長率・失業率・インフレ率・コアインフレ率・FF金利の5変数のみ。SEPアップデートでは、市場参加者のニーズに応え、上記5変数に加え下記の主要マクロ経済変数の予測値を提供。
SEPにて公開されている変数
- 実質GDP成長率、失業率、PCEインフレ率、コアPCEインフレ率、FF金利
SEPアップデートにて予測する変数
- 米国債金利(1年、2年、3年、5年、10年、30年)、住宅ローン金利(30年固定)、名目実効為替レート増価率、期待PCEインフレ率(10年)、家計純資産成長率、個人消費実質成長率、住宅投資実質成長率、設備投資実質成長率、政府支出実質成長率、輸出実質成長率、輸入実質成長率
3:四半期ごとに10年先まで予測
FRBがSEPで公表するのは、3年分の暦年ベースの予測値とそれらの長期的水準の想定値のみ。SEPアップデートでは、市場参加者のニーズに応え、各変数について四半期毎の変動やSEPの予測期間以降の動きの分析を提供。