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バーティカルAIとグローバル展開の本質

「バーティカルAI」の可能性──「顧客の課題解決」と「プロダクトを通じたスケール」の両立にむけて

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 本連載の第1回では、なぜ今AIを活用したDXが期待されているのか、その推進を担うAI企業にはどのようなチャレンジがあるのかを考察しました。第2回となる今回は、AI企業がプロダクトを通じてスケールするために、特定業界に特化する「バーティカルAI」というアプローチについて詳しく説明していきます。また、「バーティカルAI」の最大の課題であるTAM(Total Addressable Market、獲得可能な最大市場規模)が限定的なことに対し、どのような解決策があるかも考察していきます。

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AI企業がプロダクトを通じてスケールするために

 多くの「AI企業」はコンサル出身者を多く採用し、顧客の課題を特定し、その顧客にカスタマイズしたソリューションを提供するという、いわゆるコンサル的なアプローチを採用しています。しかし、コンサル的なアプローチの欠点は、労働集約的でスケールが困難なことです。ではどうすればコンサル的なアプローチから、プロダクトを通じてスケールする「AI企業」に生まれ変われるのでしょうか? どうすればプロダクトを通じてスケールしながらも、顧客ごとに異なるニーズを踏まえ、顧客の課題解決を実現できるのでしょうか?

 弊社Tractableでは、その1つの解決策として、特定業界に特化する「バーティカルAI」というアプローチを採用しています。Tractableも3年連続で選出されている、CB Insightsの「AI 100」(世界中のAIスタートアップ7000社以上から毎年100社を選出)によると、2022年は「バーティカルAI」企業が100社のうち43社を占めており、今後も特定業界に特化することで、より大きな付加価値を提供するAI企業が増えると考えています。

 AI企業がバーティカルに特化せずに、プロダクトを通じてスケールするのは、以下の理由から簡単ではないと考えています。

「競合より先にPMFを実現する難しさ」

 AI企業の場合、競合より先にPMF(Product Market Fit)を実現すれば、「顧客基盤が拡大→学習データが拡大→世界トップクラスのAIリサーチャーが集結→プロダクトが進化→顧客基盤がさらに拡大」という好循環を生み出すことができます。特に「学習データの拡大」は、AIモデルの進化に不可欠なだけでなく、世界トップクラスのAIリサーチャーを惹きつける上で非常に重要になります。バーティカルに特化しているからこそ、競合より先にPMFを実現し、上記の好循環を生み出せるのであって、これを業界横断的に実現するのは難しいと考えています。

「業界エキスパートを採用する難しさ」

 本連載の第1回では、「AIを活用したDX」が期待されている理由を紹介しました。

AI(ディープラーニング技術)を活用したDXプロジェクトは、白黒つけられない、言い換えるとルールでは裁けない複雑な課題に対処できるからこそ、高い効果を期待できるとも言えます。ルールで裁けるのであれば、とっくに既存のソフトウェアが解決しているはずです。“ルールで裁けない”領域とは、職人やエキスパートの暗黙知や経験値が必要な領域であり、このような人材の高齢化や人手不足が深刻化する中で、AIを活用したDXへの期待が高まっているのです。

 これまで職人やエキスパートが担ってきた業務の変革を目指すのであれば、AI企業としても、エンドユーザーであるエキスパート人材を積極的に採用することが重要になります。弊社の場合、自動車の損害査定に10〜20年近く携わっている業界エキスパートを世界中で20人以上採用することで、顧客と共通言語で意見交換でき、顧客の声をAIプロダクトの開発にダイレクトに反映させることができています。これも業界横断的に実現するのは難しいと考えています。

「AIが進化し続けるからこそのプロダクトマネジメントの難しさ」

 一般的なSaaSの場合、プロダクト開発が一段落すればあとはアップデートが中心になります。しかしAIプロダクトの場合、AIモデルが継続的に進化を続けることで、新たな機能を開発し続けることができるため、プロダクト開発には終わりがありません。これはAIプロダクトならではの魅力ですが、実現にむけては、AIモデルの開発ロードマップを前提にした、高度なプロダクトマネジメントが必要となります。これを業界横断的に実現するのは、非常に難易度が高いのではないでしょうか。

 上記以外にも様々な理由が考えられますが、AI企業が、プロダクトを通じてスケールするには、バーティカルに特化するのが1つの解決策と考えています。では、バーティカルAIというアプローチは万能なのでしょうか。バーティカルAIがスケールしていく上でどのような課題があるのでしょうか。

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この記事の著者

堀田 翼(ホッタ ツバサ)

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