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イノベーションが“日常”になる時代の「目的工学」とは?

第2回:多摩大学大学院 教授/目的工学研究所 所長 紺野 登 氏

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目的工学に基づく経営とは

紺野登多摩大学大学院 教授/目的工学研究所 所長 紺野 登 氏
早稲田大学理工学部建築学科卒業。一般社団法人Japan Innovation Network代表理事。
KIRO株式会社(Knowledge Innovation Research Office) 代表。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)特別招聘教授。
京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、
東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。日建設計顧問。

――目的工学とは何か、またそれに基づく経営についてご説明いただけますか。

紺野:
 目的工学は、イノベーション・新規事業のためのプロジェクトマネジメントの1つの手法とも言えます。従来の工学では目的は所与ですが、技術自体は目的を持っていません。むしろ何のためのイノベーションなのかを考える必要がある。たとえば日本の企業は技術力に優れているのになぜうまくいかないのか。技術ありきで、目的を考えないからこの問いに答えられない。通常は与えられる目的そのものをエンジニアリングするので「目的工学」と呼んでいます。

 目的工学には2つの面があります。まず1つはよい目的を発見する、作るといった「よい目的に基づく経営(management on purpose)」です。環境やコミュニティのためといった共通善に根ざした大目的の設定です。

 一方、実際にイノベーションを進めていく際には、個々のプレーヤーは、それぞれの思いを持っています。これを個としての目的につなげる必要がある(小目的と言います)。大目的と小目的は往々にして異なりますが、個の「やってやろう」という気持ちがないと、その人の能力や技術は発揮されない。大きなプロジェクトは、個人が「これは自分がやるべきだ」と目的に目覚め、それがより上位の目的とつながって一種の目的のシステムが作られたときに成功しています。
 たとえば、アポロ計画におけるケネディの大目的は、冷戦構造に代わる新しいバランスを世界にもたらすことでした。一方、実際にロケットを飛ばしたフォン・ブラウンの夢は少年が抱くような宇宙旅行でした。

 大目的、中目的、小目的といった多くの「目的群」のオーケストレーションと統合を考える。これが目的工学のもう1つの側面、「目的群の経営(management of purposes)」です。

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さまざまな目的をつなぐバウンダリー・オブジェクト――主語は“MeからWe”へ

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