イノベーションが“日常”になる時代の「目的工学」とは?

第2回:多摩大学大学院 教授/目的工学研究所 所長 紺野 登 氏

 最近、ビジネスの現場で改めて企業経営の「目的」が問われているという。その背景は何か。利益追求以外の目的はどうマネジメントするべきか。目的を軸とした新しい企業経営のモデルはどんなものか。組織・社会の知識生態学を研究テーマとする経営学者で、多摩大学大学院教授/目的工学研究所所長を務める紺野登氏にうかがった。

[公開日]

[語り手] 紺野 登 [取材・構成] 有須 晶子 [編] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ タレントマネジメント ビジネスモデル デザイン思考 イノベーターシップ 目的工学

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イノベーションに「目的」の重要性が問われる理由

――現在は時代の節目で企業経営も転換点にあり、イノベーションの必要性が叫ばれています。企業のイノベーション活動において「目的」の重要性を強調されているのはなぜでしょうか。

紺野:
 20世紀は、工場を中心に大量のモノを効率的に作る経営が主流でしたが、現在の企業は、都市生活者の急増、日本では高齢化や人口減といった劇的な変化に直面しており、ちょっと気の利いたモノなどではなく、本質的な人間社会の課題に取り組むイノベーションが求められています。

コンシャス・キャピタリズムのフレームワーク出典:Maddock Douglas (maddockdouglas.com) 資料

 市場原理主義を見直し、社会や環境のためといった共通善を目的として追求することで逆に利益も生まれると訴える「コンシャス・キャピタリズム」という考え方も出てきました。
 たとえば、これまでシリコンバレーではソーシャルメディアブームでしたが、生まれるビジネスがいわばデートサイトのレベルではないか、目的を喪失していないか、といった反省が内部からも出てきて、イノベーションの対象が、医療、エネルギー、交通など、社会的なインパクトの大きい分野へシフトしてきています。
 強い経済は強いコミュニティに支えられるというコンセンサスのもと、コミュニティの共通善に貢献するイノベーションで強い経済や事業が生まれる。これが今後のモデルです。

 私たちが直面している社会や環境の激動は、企業一社ではとても対応できないわけで、大きな目的のために、競争ではなく協業することが、やはりイノベーションの本質だと思います。最近のオープン・イノベーション、NPOが牽引するソーシャル・イノベーションなどは、いずれもそのような目的に根ざしていますね。目的を媒介にして社会的に意義あるイノベーションや事業を創造しようというのが時代の大きな流れで、目的工学が生まれてきた背景です。

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