大企業における新規事業プロセスは「アート+サイエンス」
細野氏はリクルートキャリアにて転職サイト「リクナビNEXT」の商品開発部長と新規事業開発部長を兼任しており、まさに大企業における既存事業イノベーション、新規事業立ち上げ両方に関わっている。既存事業イノベーションにおいては、人材紹介サービスのIT化で、この2年間で売上を数十億円程増加させている。新規事業立ち上げでも、今年の9月頃にサービスをローンチする予定だ。ただ、この順風満帆な実績も、プロセス改善があったからに他ならない。
実際に大企業の中でどのようなプロセスを踏むべきなのか。はじめに新規事業の領域について語ってくれた。下図が細野氏の考える「新規事業開発のプロセス」を図式したものだ。
まず「アイデア( i )」を誰かが思いつく。メンバーが思いつく場合もあれば、役員が思いついてメンバーがアサインされる場合もある。例えば転職サービスであれば「年収が気になる人が多いので、年収を使ってサービスを作れないか」という様なアイデアである。
次にこの「アイデア( i )」が「イノベーション( I )」に成熟する姿を描く訳だが、この作業は「アート」だと細野氏は語る。
面白いプロダクト作るってアートが必要だと考えています。プロセスを洗練させれば面白いプロダクトができるなんて嘘。お笑いみたいなもので、どれだけお笑い養成所に通っても、才能がないと開花しない。この領域はサイエンス100パーセントではないと社内で言い切っています。
もし「アイデア( i )」から「イノベーション( I )」が描けても、いきなり完成品はつくらない。MVP( Minimum Viable Product )をつくり仮説検証をしていく。ここはアートではなく、サイエンスの部分だ。そしてその結果、当初描いていた「I」とは違う、より大きな「 I’ 」ができるという。しかし、「イノベーション( I )」から「イノベーション( I' )」ができあがる確率は、20個に1個くらいしかない。
特にリーンに仮説検証を繰り返せば、いつかイノベーションに行き着くと信じている人が多い。だから、このアイデア( i )の少し上の「アイデアに毛が生えた程度のプロダクトもどき」をまずは立ち上げてしまい、リーンっぽいプロセスに早く入りたがる。何も整っていないものを仮説検証しはじめます。
一つ目は「1人のメンバーに複数のボールを持たせること」だという。20個に1つほどしか成功しない確率を補うためにも数を打つことが重要。さらにそれに加え、細野氏は「1人に1つずつある程度成功確率の高いボールを渡すという工夫」も行っている。
確実にマーケットを捉えてそうなボールを一個渡してあげて、不安を払拭させ、残り2つでチャレンジさせてポートフォリオを組むというやり方をしてマネジメントしています。