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ESG時代のガバナンスとIR

田中弦氏と市川祐子氏が語る、人的資本開示を経営企画が主導すべき理由──人への投資で目指す姿とは?

ゲスト:Unipos株式会社 代表取締役社長CEO 田中弦氏

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 本連載では、『楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方』や『ESG投資で激変!2030年 会社員の未来』(共に日経BP)の著者である市川祐子氏(マーケットリバー代表取締役)が日本の企業のキーパーソンと対話を重ね、ESG経営をコーポレートガバナンスやIRの視点から紐解いていく。今回は、日本企業957社の統合報告書に目を通し、各社の人的資本開示の状況を分析したUnipos株式会社の代表取締役社長CEO 田中弦氏をゲストに迎えた。人的資本開示によって日本企業の競争力が向上していくことを期待する両者の議論を、前後編でお届けする。  

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“自由演技”が多い人的資本開示の義務化は是か非か

田中弦氏(以下、敬称略):私は上場企業で統合報告書やCSRレポートなどを発行している957社の情報に目を通し、人的資本の開示状況を独自に格付けしてみました。最高点の5を付けた企業は37社あるのですが、最近、そのうちの数社の方と対話をする機会に恵まれました。

人的資本の情報開示の充実度に対する格付けの基準
図版:田中氏による、人的資本の情報開示の充実度に対する格付けの基準
クリックすると拡大します

市川祐子氏(以下、敬称略):それは興味深いですね。

田中:お話してみて分かったのが、ほとんどの会社が「どうしてうちの開示が評価されるんですか?」という感想なんです。

 皆さんそれぞれに良い開示をしようと努力されていて、自然に「目標がなくてはゴールを目指すこともできないよね」という考え方をされています。だから、経営層から言われなくても独自の指標を作り、現状を分析して課題を見出し、打ち手も考えることになったのでしょう。他社のやり方を取り入れたわけではないけれど、それぞれの会社で頑張った結果、良い開示をしていると思えた会社のスタイルには共通点が見出せました。

市川:事業会社で開示を担当する側にいた経験を振り返ると、自分たちの会社をきちんと表現しようとか、投資家に対して会社の方向性を理解してもらおうということを突き詰めると、独自の開示方法になっていきました。その結果「海外のどこそこの会社でも同じようにやってるよ」と言われたりもしましたが、特に真似したわけではなかったですね。

田中:なるほど。もうひとつ、そういう会社の方とお話して見えてきたのは、いろいろな部署の人が絡んでいるということですね。

市川:それは重要ですね。それと正反対の意味でよく聞くのは、有価証券報告書は経理が担当し、統合報告書はIRと広報、人材に関しては人事部……といった感じで、バラバラに作っているという状況です。

 この延長で人的資本の情報開示義務に対応しようとすると、人事に丸投げになり、人事は他社の開示情報を見て、「これはうちでもデータがあり数値化できる」という指標をピックアップして開示する。その結果、会社のトップが考えている戦略と関係のない開示内容になってしまうことが、すごくよくある問題で……。

田中:そうです。統合報告書の冒頭にある経営者のインタビューと、後半で人事責任者が書いているパートの内容が、結構ずれていること多いですよね。

市川:戦略面の開示でDXに結構なページを割いているのに、DX人材についての話は全然出てこない、ということもあります。先日も、ある企業の経営企画の方に統合報告書を見せていただきました。前段の戦略のところにDXと書いてあるので、「素晴らしい内容ですが、DXに関する人材の指標は入れないんですか?」と聞くと、「そんなことは考えたことがなかった」とおっしゃっていました。

田中:当事者が厄介に思うだろうことは、人的資本開示は義務付けされたけど、どんな指標を使うのかは定められていないことです。また数値だけではなくて「目標と数値をセットで出せ」と定められたことですよね。「目標」と言われて、皆さん頭を抱えることになるんじゃないかと。現状は、「女性管理職比率は◯◯%です」とだけ書かれていて、目標がないことがほとんどですから。市川さんはどうお考えですか?

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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