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ESG時代のガバナンスとIR

良い人的資本開示がもたらす、企業の存在意義の再定義と事業成長──株主や従業員、求職者への課題開示とは

ゲスト:Unipos株式会社 代表取締役社長CEO 田中弦氏

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 IRの専門家である市川祐子氏(マーケットリバー代表取締役)と、日本企業の人的資本開示の状況を調べ、独自に格付けを行った田中弦氏(Unipos株式会社の代表取締役社長CEO)による対談。人材を資産、すなわち投資の対象として捉える視点がまだ弱い日本企業の現状が語られた前編につづき、後編では、日本企業が人を生かして競争力を上げていく上での目標設定の重要性と、人的資本開示によって期待される成果についての議論が行われた。

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開示内容が事細かに“決められていないこと”の意味

田中弦氏(以下、敬称略):今、海外の開示情報を有名企業中心に150から200社くらい分析してます。その結果、「日本企業の開示の方が良くなっていくんじゃないか」というのが私の仮説です。

 なぜかというと、海外の企業は目標設定を開示しているところが少ないからです。ダイバーシティについては「女性比率をこのくらいにする」とか「男女のサラリーの平等性をこのくらいにする」といった目標が出てきますが、「エンゲージメントをここまで上げる」といったものは、200社近く見ても出てきません。

 どういうことかと考えてみると、海外の場合は人種や階層による差別や格差が大きな社会課題なので、それを是正することがテーマになりやすいのでしょう。

 日本の場合、女性活躍とかLGBTQを含む多様性というのは重要なテーマではありますが、人種や階層に関しての問題に取り組む必要性が海外と比べればまだ薄いと言える。そうなると、人に関する一番の課題は「流動性が低く、人的資産の価値が十分に引き出されていない」ということですよね。

市川祐子氏(以下、敬称略):海外と日本では課題が違うということですよね。海外の場合、特に田中さんが見た有名どころの会社は既に稼げており、人材の流動性もある。そうなると、ダイバーシティのバランスが社会と合っているかということの方が投資家から見た課題として大事なのでしょう。

 一方で日本企業の課題は「稼げていない」ということで、その大きな要因に「人をうまく活用できていない」こと、人の流動性が低いことがあります。その根深い問題に機関投資家が気づきはじめたということが、大きな影響を与えているのだと、私は見ています。

田中:それでも日本の企業はなかなか変わらない。だから、目標設定が必要です。

市川:日本の上場企業は真面目ですから、お上が「目標設定しろ」と言えば必ずやりますね。

田中:そうです。だから、今回のレギュレーションはすごく日本人に合っていると思います。

市川:金融庁が出したレギュレーションの肝は、戦略と指標を自分たちで決めなさい、というところです。これまでは、有価証券報告書で開示すべき内容が事細かく決められていたのですが、今回はそうしなかった。

 これについて一橋大学(CFO教育研究センター長)の伊藤(邦雄)先生は、「日本企業は細かく指標を決めるとそれしかやらないから」とおっしゃっていました。「自分の会社にとって大事な指標なのかどうか考えずにやるから良くない。だからあえて決めない」と。今は皆さん困っていますけど、「大事なことは自分で決めなさい」というのは、とても良い指針だと思います。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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