ボトムアップでは解決しない日本企業のDX課題
──まずは中田さんの所属するデジタルストラテジーグループについて教えてください。
これからデジタルに取り組もうとする大企業に対して、目指すカスタマー・エクスペリエンス(CX)のビジョンを策定するところから始まり、実行に向けたロードマップ策定、ROI創出、チェンジマネジメントなどに関する助言・提案を行う部署になります。
事業部としてはデジタルエクスペリエンス事業統括本部に属するのですが、デジタルメディア事業統括本部が扱う「Adobe Photoshop」や「Adobe Premier Pro」といった製品と比べて、我々の扱う製品がもたらすバリュー(「CMS:コンテンツ管理システム」機能や「DAM:デジタルアセット管理」機能を提供するAdobe Experience Manager を導入することにどんなメリットがあるのか、など)は、お客さまからするとややわかりづらいところがあります。
そのため、お客さまのビジネス課題を伺ったうえで、我々の製品がそれを解決するためのツールになりえるのだと、しっかり対話をする必要があります。
そこを担っているのが我々の部署。ですから、今日のテーマであるDXにまつわるお悩みも日々伺う立場にあります。
──そんな中田さんから見て、日本企業のDX推進にはどんな課題があると映っていますか。
2つほど挙げたいと思います。1つは、絶対的な人材不足です。日本市場全体で労働者の数が絶対的に減少している中、DX領域の人材をどう確保すればいいのかには、みなさん頭を悩まされています。私自身も採用マネジャーを務めていますので、ひしひしと感じるところです。
もう1つは、部門間の壁を壊せず、サイロ化してしまう課題です。CXでもマーケティング部門、プロダクト部門……と本当に様々な部門が関わってきます。それを大きく変革しようと思ったら部門間連携は必須です。
部門間の壁を超えて変革するには、トップダウンで進める以外にありません。しかし、良い面でもあるのですが、日本企業にはボトムアップを重視するという文化があります。それでは自部門の改善・改革を起点に、できそうな範囲で周りも巻き込むといったレベルの話に留まってしまいます。そういう日本企業の慣行が障壁になってしまっていると感じることが多いです。
先日とある銀行の方との会話でも、この話題になりました。現行の非効率な業務をできることならデジタルで効率化したい。けれどもそうすると、その業務にあたっていた人たちを異動させるなりする必要が出てきます。これはもう一部門がボトムアップでどうこうできる話ではないですよね。「トップダウンでやらなければ全く話は進まない」とその方はおっしゃっていました。