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Quantum.Tech APAC 2023レポート

APAC開催の量子ビジネスカンファレンスに見る世界の潮流──業界の概要とバリューチェーン、投資動向

前編

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 量子コンピューティングや量子暗号、量子センシング等、量子技術における世界最大のビジネスカンファレンスの1つであるQuantum.Tech。4月4日・5日には、APAC(アジア太平洋)エリア初、そしてエリア最大級の会議として、Quantum.Tech APAC がシンガポールで開催されました。これまで欧米中心で開催されてきた量子技術のビジネスカンファレンスがなぜAPACで開催されたのでしょうか。アジア太平洋地域の量子エコシステムの国際ハブはシンガポールとなるのでしょうか。今回、国内外の産官学のパートナーと共に量子技術による社会変革を推進するQuantum Transformation(QX)プロジェクトをリードしてきた私が日本から登壇することとなりました。本記事から前後編にわけて参加レポートをお届けします。

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Quantum.Tech APACの概観

 最初に、参加者のラインナップを紹介します。これまで欧米で開催されてきたカンファレンスとは異なる顔ぶれです。開催地シンガポールの参加者が多いのはさることながら、インドやフィリピン、ベトナムなどアジア各国からの参加者も多いことが特徴的でした。

国名

名称

概要

シンガポール

National Quantum Computing Hub

量子技術に関する国家プロジェクト

National Quantum Office

科学技術研究機構量子研究室

Cap Vista

防衛科学技術庁(Dsta)戦略的投資部門

National University of Singapore

シンガポール国立大学

SMU

シンガポールマネジメント大学

Yale-NUS

イエール大学とシンガポール大学の合弁大学

SGInnovate

ベンチャーキャピタル

Temasek

ベンチャーキャピタル

Entropica Labs

量子ソフトウェアスタートアップ

Horizon Quantum Computing

量子ソフトウェアスタートアップ

SpeQtral

量子暗号スタートアップ

pQCee

量子暗号スタートアップ

Atomionics

量子センサースタートアップ

BP

オイルメジャーBPのシンガポール拠点

SoftServe

ウクライナのIT企業のシンガポール拠点

Lazada

eコマースプラットフォーム(アリババグループ)

Thales

フランスIT大手シンガポール支社

インド

Quantum Ecosystems and Technology Council of India

量子分野コンソーシアム

Quanfluence

量子ハードウェアスタートアップ

韓国

Norma

IoTセキュリティ企業

SK Telecoms

情報通信企業

ベトナム

Vietnam National University

ベトナム国家大学

フィリピン

OneQuantum Philippines

量子グローバルコミュニティフィリピン支部

タイ

Quantum Technology Foundation Thailand

量子ソフトウェアスタートアップ

SCG Chemicals

大手化学品メーカー

インドネシア

Electronic Science Indonesia

ITベンダー

オーストラリア

Allectus Capital

ベンチャーキャピタル

Q CTRL

量子ソフトウェアスタートアップ

Diraq

量子ハードウェアスタートアップ

アメリカ

PsiQuantum

量子ハードウェアスタートアップ

Atom Computing

量子ハードウェアスタートアップ

Microsoft

大手量子コンピュータ開発メーカー

IBM

大手量子コンピュータ開発メーカー

Womanium

科学分野の女性支援非営利団体

Inside Quantum Technology

量子分野特化Webメディア

Global Quantum Intelligence

量子専門の調査会社

イギリス

Qureca

量子分野の教育、人材紹介、調査、コンサルティング企業

Vodafone

情報通信サービス

Entangled Positions

量子人材紹介会社

Gallagher Re

再保険会社

カナダ

CogniFrame

量子ソフトウェアスタートアップ

ドイツ

Moody’s Analytics

格付会社グループの調査会社

オランダ

European Quantum Industry Consortium

量子業界団体

フィンランド

VTT Technical Research Centre of Finland

国立研究所

IQM

量子ハードウェアスタートアップ

ルーマニア

Quarks Interactive

量子コンピューティング教材開発企業

日本

住友商事

総合商社、量子プロジェクト

※主催者・登壇者提供資料より作成

 本連載では、この中からいくつかの発表をかいつまんでご紹介していきます。

量子業界の概観

 初日の基調講演に登壇したのは、Global Quantum Intelligence社のDavid Shaw氏。彼は、量子業界の分析レポートを発信する調査事業を行っており、様々な量子イベントでファシリテーションを務めるなど世界で最も量子業界に明るい人物の一人です。

Global Quantum Intelligence David Shaw氏
Global Quantum Intelligence David Shaw氏

 最初に、産業のGDP比率を分解した図をもとに、どこに量子が適用されるかを示しました。資源採掘から製造、サービスまでほぼすべての領域に、量子コンピュータ、量子暗号、量子センサーが影響を及ぼすとのことです。将来量子技術が無縁の人はいないといえるでしょう。

クリックすると拡大します

 次に、量子産業を8つのレイヤーに切り分け、その中でいくつかの話題に触れました。

クリックすると拡大します

 産業界の最大の関心事は、「量子コンピュータが既存のコンピュータと比べ実用面で優位性を持つ“Quantum Advantage”にいつ達するのか?」です。その実現に向けて、様々なレイヤーに課題があります。Shaw氏は、最も大きな課題として量子コンピュータのハードウェアにおけるエラー率の高さ、量子ビット数の少なさを挙げました。

 現在、ハードウェアの方式として、超伝導、イオントラップ、中性原子、光など様々なものが開発されています。しかし、どれも一長一短あり、これまでに提案されていない新しい方式が入り込む余地も十分にあると語りました。

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この記事の著者

寺部 雅能(テラベ マサヨシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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